定義
脂肪変性は、肝臓、心筋、骨格筋などの実質細胞へトリグリセリド滴が過剰に蓄積する、初期には可逆的な細胞変化である。脂肪毒性は、脂肪酸供給が酸化、輸送、安全なトリグリセリド貯蔵能力を超え、セラミド、ジアシルグリセロール、アシルカルニチン、遊離コレステロールなどの生理活性脂質が、小胞体、ミトコンドリア、細胞膜情報伝達を障害する状態を指す。
イメージ
トリグリセリド滴は、余った脂肪を比較的安全に梱包する倉庫と考える。倉庫が増えすぎることも問題だが、より直接的な毒性を持つのは、梱包しきれず細胞内の情報伝達や小器官へ入り込む反応性脂質である。
仕組み
脂肪酸流入増加、肝内脂肪酸合成亢進、β酸化低下、VLDLとしての輸送低下のいずれかでトリグリセリドが蓄積する。インスリン抵抗性では脂肪組織からの脂肪酸流入が増え、高インスリン血症は肝内脂肪酸合成も促す。ジアシルグリセロールは新規型PKCを介してインスリン受容体情報伝達を阻害し、セラミドはAkt抑制や細胞死を促し得る。過剰なβ酸化は電子漏出と活性酸素産生を増やし、小胞体ストレス、膜脂質組成異常、炎症、細胞死へつながる。トリグリセリド合成は反応性脂質を一時的に隔離する緩衝機構でもあるため、脂肪滴量と細胞障害の程度は必ずしも比例しない。
例
肝脂肪変性は単純な脂肪蓄積にとどまる場合もあるが、酸化ストレス、脂肪毒性、炎症が加わると脂肪肝炎と線維化へ進み得る。心筋や膵β細胞への異所性脂質蓄積は、心筋収縮やインスリン分泌を障害することがある。