定義
味覚変換は、味蕾内の味細胞が口腔内の化学物質を検出し、伝達物質を放出して顔面神経、舌咽神経、迷走神経の求心線維を活動させる過程である。甘味・旨味・苦味は主にT1R・T2R受容体、酸味はOTOP1プロトンチャネル、塩味は複数のイオン経路によって受容される。味質は、味細胞や求心線維の選択性と、神経集団全体の活動パターンの両方を利用して表現される。
イメージ
舌の特定部位が一つの味だけを感じるわけではなく、広い範囲に複数種類の味細胞が混在している。各細胞は特定の化学物質群へ強く反応し、その組合せと発火パターンが脳へ送られて、味の種類、濃さ、混合状態が表される。
仕組み
II型味細胞では、甘味受容体T1R2/T1R3、旨味受容体T1R1/T1R3、苦味受容体T2Rがガストデューシン、PLCβ2、IP₃受容体3を介して細胞内Ca²⁺を増やし、TRPM5を開いて脱分極させる。活動電位が生じるとCALHM1/3チャネルからATPが放出され、求心線維のP2X受容体を刺激する。酸味を受容するIII型味細胞ではH⁺がOTOP1を通って流入し、細胞内酸性化とK⁺電流低下によって脱分極し、通常型のシナプスからセロトニンなどを放出する。低濃度塩味にはENaCの関与が知られるが、ヒトの高濃度塩味は複数の経路が関与して複雑である。求心性情報は孤束核、視床、島皮質へ進み、眼窩前頭皮質で嗅覚、温度、口腔体性感覚と統合され、食物全体の風味となる。
例
ショ糖はT1R2/T1R3を介してII型味細胞を脱分極させ、ATP放出を起こす。キニーネは複数のT2Rを刺激し、苦味として回避行動を促す。鼻をつまんでも甘味・塩味などの基本味は感じられるが、鼻腔後方から入る嗅覚情報が減るため、食品の風味の識別は大きく低下する。