定義
TGF-β–SMAD経路は、TGF-βスーパーファミリーのリガンドがI型・II型受容体複合体へ結合し、受容体調節SMADをリン酸化して核内転写を変える情報伝達である。発生、組織恒常性、免疫抑制、細胞外基質産生に関与し、文脈により増殖抑制と腫瘍進展の両面を示す。
イメージ
細胞に「増殖を止め、役割を変え、周囲の足場を作り直せ」と指示する長期的な設計変更信号に近い。正常上皮では増殖抑制が目立つが、慢性障害や進行腫瘍では線維化・浸潤に利用されることがある。
仕組み
TGF-βがII型受容体へ結合すると、II型受容体がI型受容体のGS領域をリン酸化する。活性化I型受容体はSMAD2/3をリン酸化し、SMAD4と複合体を形成して核へ移行する。核内では転写因子・共役因子と協調し、p15/p21、ECM蛋白、PAI-1、EMT関連遺伝子などを調節する。SMAD6/7は抑制性SMADとして受容体作用を抑え、ユビキチン化や脱リン酸化も終息に関与する。BMP群では主にSMAD1/5/8が使われ、同じスーパーファミリーでも出力が異なる。
例
慢性組織障害ではTGF-βが線維芽細胞活性化、筋線維芽細胞化、コラーゲン産生を促し線維化に寄与する。正常上皮細胞では細胞周期抑制を示すが、進行癌ではEMTや免疫抑制を助ける場合がある。