定義
訓練免疫は、抗原特異的な受容体遺伝子再構成を持たない自然免疫細胞が、感染、ワクチン、代謝物などの初回刺激後に比較的長く持続する機能変化を獲得し、再刺激時の反応性が増強または再構成される現象である。成熟した単球・マクロファージだけでなく、骨髄の造血幹・前駆細胞に生じる変化が、数週間から数か月に及ぶ持続へ関与する。
イメージ
自然免疫は毎回完全に初期化されるのではなく、初回の経験によって炎症遺伝子の『扉』や代謝経路を開きやすい状態へ変え、次回は異なる病原体の刺激にも速く強く反応することがある。ただし、抗体やT細胞受容体のような精密な抗原特異性を獲得するわけではない。
仕組み
βグルカン、BCG由来成分、酸化LDLなどがDectin-1、NOD2、TLRなどを刺激すると、mTOR–HIF-1α経路、解糖系、メバロン酸経路、グルタミン分解などが再構成される。ヒストンのメチル化・アセチル化やクロマチンの開放性が炎症関連遺伝子の調節領域に残り、二次刺激時の転写を起こしやすくする。IL-1βなどは骨髄の造血前駆細胞へ作用し、骨髄系造血とエピジェネティック状態を変化させ得る。一方、エンドトキシン耐性のように再刺激応答が低下する自然免疫記憶もあり、初回刺激の種類、強さ、組織環境によって反応の方向は変わる。
例
BCG接種後に、結核以外の一部病原体へ対する自然免疫応答が一時的に変化することが報告されている。βグルカンへの曝露は単球・マクロファージの二次サイトカイン応答を増強し得る。一方、酸化LDLなどによる訓練免疫は、動脈硬化性炎症を持続させる方向に働く可能性がある。