定義
体内K⁺の約98%は細胞内に存在する。K⁺の細胞内外移動とは、巨大な細胞内K⁺プールと小さな細胞外液プールの間でK⁺が再分布し、腎臓や消化管からの正味出納が変わらなくても血清K⁺濃度が変化する現象である。数分から数時間で働く急性調節であり、インスリン、β₂アドレナリン受容体刺激、酸塩基平衡、浸透圧、運動、細胞破壊などが影響する。
イメージ
体内K⁺の総量ではなく、大きな細胞内倉庫から血液という小さな展示棚へどれだけ出ているかが血清値を決める。倉庫へ少量移すだけでも、展示棚の濃度は大きく変わる。
仕組み
インスリンとβ₂アドレナリン受容体刺激はNa⁺/K⁺-ATPアーゼ活性を高め、骨格筋などへK⁺を取り込む。アルドステロンにも細胞内取り込みを促す作用がある。無機酸によるアシデミアでは、H⁺とK⁺の細胞内外移動やポンプ機能変化によりK⁺が細胞外へ出やすいが、有機酸、呼吸性変化、細胞種によって反応は異なる。高浸透圧では水が細胞外へ移動し、細胞内K⁺濃度上昇と水移動に伴ってK⁺が外へ出る。溶血、横紋筋融解、腫瘍崩壊などでは細胞内K⁺が直接放出される。運動中は筋からK⁺が一時的に流出し、運動後にNa⁺/K⁺-ATPアーゼで回収される。
例
インスリン投与やβ₂作動薬は体内からK⁺を除去せず、細胞内へ移して血清K⁺を一時的に下げる。透析や利尿によるK⁺除去とは目的と時間軸が異なる。高血糖による高浸透圧とインスリン不足では血清K⁺が高くても、浸透圧利尿により体内総K⁺量は減っていることがある。