定義
Wnt–βカテニン経路は、分泌性WntリガンドがFrizzledとLRP5/6へ結合し、通常は分解されるβカテニンを安定化して転写共役因子として働かせる典型Wntシグナルである。発生時の位置情報、幹細胞の自己複製、上皮更新、骨形成などを調節する。
イメージ
βカテニンを「残してよい転写メッセージ」と考えるとよい。Wntがないと破棄装置が常に作動してメッセージを分解する。Wntが来ると破棄装置が止まり、βカテニンが蓄積して核へ届けられる。
仕組み
Wnt非存在下ではAPC、Axin、GSK3β、CK1からなる分解複合体がβカテニンを段階的にリン酸化し、β-TrCP依存性ユビキチン化と分解へ導く。WntがFrizzled/LRPへ結合するとDishevelledが活性化され、Axinが膜へ動員されて分解複合体が抑制される。蓄積したβカテニンは核でTCF/LEFと結合し、増殖・分化関連遺伝子を調節する。βカテニンは接着結合の構成要素でもあるため、膜接着プールと転写プールは機能的に区別される。
例
腸陰窩ではWntが幹細胞維持と上皮更新を支える。APC機能喪失ではWnt刺激がなくてもβカテニンが蓄積し、増殖シグナルが持続する。骨ではLRP5/6を介するWntが骨芽細胞系へ影響する。