定義と要点
酸素脈は、単位時間の酸素摂取量V̇O₂を心拍数HRで割った値で、通常mL O₂/拍で表す。心肺運動負荷試験CPETで用いられ、一回の心拍に対応する全身の酸素摂取を示す。Fickの原理から、酸素脈=一回拍出量SV×動静脈酸素含量較差となる。名前に「脈」が含まれるが、脈圧、酸素飽和度、脈拍の強さを表す指標ではない。
どの量を見ているか
V̇O₂=心拍出量×(動脈血酸素含量−混合静脈血酸素含量)であり、心拍出量=HR×SVである。この二つを組み合わせてHRで割ると、酸素脈の式になる。したがって値には心臓が一拍で送る量と、組織が血液から取り出す酸素の量の両方が含まれる。酸素脈をそのままmL/拍の一回拍出量として読むと、酸素含量較差の項を無視してしまう。
仕組みを順に考える
運動強度が上がると、一回拍出量の増加と末梢での酸素抽出増加が酸素脈へ影響する。一回拍出量が同じでも、貧血や動脈血酸素化、筋の抽出能が変われば値は変わる。心拍数を抑える薬剤やペースメーカーの設定も、V̇O₂との関係を通じて解釈へ影響する。低い値をすべて心収縮力低下で説明せず、心拍応答と血液・末梢組織の両面から考える。
数値・症例で確かめる
V̇O₂1,500 mL/分、HR150回/分なら酸素脈は10 mL O₂/拍である。動静脈酸素含量較差を仮に0.10 mL O₂/mL血液とすればSVは100 mL/拍と計算できる。しかし較差が0.125なら同じ酸素脈でもSVは80 mL/拍になる。これは較差を仮定した教育用の比較で、患者の実測値を伴わず一回拍出量を決定する方法ではない。酸素脈の単位とSVの単位が異なることも確認する。
解釈の限界
運動後半の酸素脈が平坦になる所見は、循環予備能を考える手がかりになり得るが、冠動脈疾患を単独で確定する所見ではない。測定誤差、運動負荷の進め方、努力、体格、抽出能、心拍応答などが影響する。心不全を対象とした研究でも、酸素脈からのSV推定精度には限界が示されている。予測値の百分率と実測絶対値を混ぜず、使用した予測式や対象集団も確認する。