定義と要点
尿アニオンギャップUAGは、尿中Na⁺濃度とK⁺濃度の和からCl⁻濃度を引いた値である。通常はすべてmmol/Lで計算する。主に正常アニオンギャップ性代謝性アシドーシスで、腎臓の酸排泄反応を考える際の補助情報となる。血清アニオンギャップとは検体も目的も異なる。UAGそのものが尿中アンモニウムNH₄⁺の直接測定値というわけではない。
どの量を見ているか
尿も電気的には中性であるが、通常の式ではすべての陽イオン・陰イオンを測っていない。酸負荷へ腎臓が反応してNH₄⁺とCl⁻を多く排泄すると、式に含まれるCl⁻が増え、式に含まれないNH₄⁺は増えても足されないため、UAGは負になりやすい。この関係は、NH₄⁺の相手となる陰イオンや他の未測定物質が大きく変化しないことを前提とする。
仕組みを順に考える
代謝性アシドーシスでは腎アンモニア産生とNH₄⁺排泄が酸の処理に重要となる。下痢などで体外へHCO₃⁻が失われ、腎機能が保たれていれば、NH₄Cl排泄の増加が期待される。一方、腎の酸排泄が不十分ならその反応が弱いことがある。ただし尿pHは遊離H⁺の活動度を示すもので、緩衝されたNH₄⁺を含む総酸排泄量ではない。低い尿pHだけで十分な酸を排泄しているとは判断できない。
数値・症例で確かめる
尿Na⁺30、K⁺20、Cl⁻80 mmol/Lなら、UAG=30+20−80=−30 mmol/Lである。正常AG性アシドーシスという条件の下ではNH₄Cl排泄増加と矛盾しない。別の例でNa⁺40、K⁺25、Cl⁻30なら+35となるが、それだけで尿細管性アシドーシスを確定しない。尿中の未測定陰イオン、食事、薬剤、腎機能、経過によって式の意味が変わるからである。
解釈の限界
ケトン体や薬剤由来陰イオンなどがNH₄⁺とともに排泄される場合、Cl⁻に基づくUAGはNH₄⁺排泄を反映しにくい。CKDやさまざまな尿中溶質の変動でも信頼性が落ち、研究ではUAGと実測NH₄⁺が十分相関しない集団も示されている。正のUAGを「NH₄⁺が出ていない」と断言せず、直接測定が可能ならそちらを優先して考える。近位尿細管性アシドーシスでは状況によりNH₄⁺排泄が保たれる点にも注意する。