本文へ移動酸塩基の代償はどう計算する?血液ガスの3事例で混合性障害を考える | ブログ | Medulava医学部向けブログ
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医学部基礎医学2026-10-27読了目安 5分執筆: Medulava 編集部 酸塩基の代償はどう計算する?血液ガスの3事例で混合性障害を考える
代償の方向と量を分けて確認。代謝性アシドーシス、急性・慢性の呼吸性変化を学習用計算事例で整理します。
「PaCO2とHCO3−が同時に変化している」とき、二つの病気があるのか、正常な代償なのか迷いやすくなります。まず主な異常を決め、次にその異常に対して予想される反応と比べます。代償は、変化しているかどうかだけでなく、どの程度変化しているかを確かめる必要があります。
以下は計算を練習するための架空の成人事例です。目安の式には幅があり、急性・慢性の判断には病歴と経過が必要です。数値だけから治療内容を決めるための例ではありません。
代償は「原因を反対側から支える反応」
HCO3−が減ってpHが下がる代謝性アシドーシスでは、換気を増してPaCO2を下げる方向の反応が起こります。PaCO2が上がる呼吸性アシドーシスでは、時間をかけた腎の反応によりHCO3−が増えます。肺と腎の反応速度が異なることが、急性・慢性を区別する理由です。
代償があることは、原疾患が治ったことを意味しません。pHが基準範囲に近づいても、そのために大きな呼吸負荷がかかっている場合があります。また、単純な代償だけで反対側の異常へ過剰に振れるとは通常考えず、説明が合わなければ混合性障害を検討します。
事例1:代謝性アシドーシスへの換気の反応
HCO3−12mEq/L、PaCO2 26mmHg、pH約7.29を考えます。HCO3−低下がアシデミアを説明し、PaCO2低下はpHを上げる方向です。Winterの式では予測PaCO2=1.5×12+8=26、目安の範囲は24〜28mmHgとなり、実測26は整合します。
この段階では「代謝性アシドーシスに対する呼吸性代償は予測範囲」と表現できます。原因の診断は別です。Na、Cl、アルブミン、乳酸、ケトン、腎機能などを確認し、どのようにHCO3−が減ったかを調べます。
同じHCO3−12でもPaCO2が40なら、必要な反応より高い値です。通常のPaCO2基準範囲内であっても、代謝性アシドーシスにとっては不適切に高く、換気不全が重なった可能性があります。PaCO2 18なら予測より低く、呼吸性アルカローシスの併存を考えます。
事例2:PaCO2が高いときの急性・慢性
PaCO2 60mmHgを考えます。平常値40から20上がったとすると、急性呼吸性アシドーシスではHCO3−は約2mEq/L増えて26程度、慢性では約7〜8増えて31〜32程度が学習上の目安です。慢性の方が腎の代償が進み、pH低下が軽くなる傾向があります。
ただし、HCO3−が32だから数日以上続いていると確定はできません。もともとの代謝性アルカローシス、利尿薬、嘔吐などが値を変えることがあります。過去の血液ガス、病歴、薬剤、電解質と一緒に判断します。急性増悪が慢性高CO2血症の上に重なる場合もあります。
PaCO2 60mmHgの例 | HCO3−の見え方 | 次に考えること |
|---|
HCO3−26程度 | 急性の目安に近い | 急な換気低下、発症時刻 |
HCO3−31〜32程度 | 慢性の目安に近い | 過去の値、慢性呼吸障害 |
目安から大きく離れる | 単純な代償で説明しにくい | 混合性障害、基礎値、検体条件 |
事例3:pHが正常でも異常が重なる
pH7.40、PaCO2 20mmHg、HCO3−12mEq/Lなら、Henderson–Hasselbalchの関係として整合する組み合わせです。しかし両方の値が大きくずれています。HCO3−12の代謝性アシドーシスに対して予測PaCO2は24〜28なので、実測20はさらに低く、呼吸性アルカローシスの併存を考えます。
ここで「pHが正常だから代償完了」と書くと、重要な情報を消してしまいます。pHは複数の過程の合計の結果です。互いに反対方向へ働く異常が存在する可能性を、PaCO2とHCO3−の組み合わせから読みます。
AGは代償をみる計算と役割が異なる
アニオンギャップは、主に代謝性アシドーシスの背景を整理する計算です。Winterの式は、そのときの換気の反応が適切かを考える式です。どちらか一つを計算して終えるのではなく、「代謝の原因を分類する」と「呼吸の反応を比較する」という別の問いに答えます。
AGの上昇とHCO3−の低下の釣り合いから、追加の代謝性異常を検討することもあります。ただし、検査室のAG基準、アルブミン、もとのHCO3−の値に左右されます。式を機械的に当てはめ、わずかな差だけで複雑な混合性障害を断定しないことが大切です。
記録では「予測」と「実測」を並べる
「代謝性アシドーシス。HCO3−12に対する予測PaCO2は24〜28、実測は40であり、呼吸性アシドーシスの合併を疑う」という形なら、判断の根拠が分かります。式の名称だけを書くより、数字を並べる方が誤算にも気づけます。最後は呼吸状態と病歴に戻り、数式だけで病態を確定しないでください。
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