定義
自律神経の共伝達とは、一つのニューロンが複数種類の伝達物質を利用する仕組みである。交感神経や副交感神経の終末は、主伝達物質に加えてATP、ニューロペプチドY、VIPなどを同一または別の小胞へ蓄え、刺激の頻度や持続時間に応じて放出する。これにより、数ミリ秒から数分以上にわたる異なる時間尺度の反応を組み合わせられる。
イメージ
一つの神経が一種類の言葉だけを使うのではなく、短い即時命令と長く効く補足指示を同時に送ると考える。低頻度刺激では小分子伝達物質が中心となり、高頻度・持続刺激では大型有芯小胞から神経ペプチドが加わることが多い。
仕組み
交感神経終末では、ノルアドレナリンとATPが放出される。ATPはP2X受容体を介して速い脱分極や収縮を起こし、ノルアドレナリンはα受容体・β受容体を介してより持続的な反応を作る。高頻度刺激では大型有芯小胞からニューロペプチドYなどが放出され、血管収縮を増強したり、他の伝達物質放出を調節したりする。副交感神経系では、アセチルコリンにVIPや一酸化窒素作動性信号が組み合わさり、消化管運動、血管弛緩、腺分泌を調節する。受容体分布、伝達物質の分解速度、拡散距離、シナプス前受容体による調節が、各成分の強さと持続時間を決める。一酸化窒素は小胞に蓄積されず、刺激時に合成されて拡散する点で典型的な共伝達物質と異なる。
例
血管交感神経刺激では、ATPによる速い収縮、ノルアドレナリンによる持続収縮、ニューロペプチドYによる長時間の増強が重なることがある。消化管ではアセチルコリンによる収縮性入力と、VIP・一酸化窒素による弛緩性入力が局所回路の中で使い分けられる。