定義
バイアス作動性または機能選択性は、一つの受容体が複数の情報伝達経路へ結合できるとき、異なるリガンドが受容体の異なる活性構造を安定化し、ある経路を他の経路より相対的に強く活性化する現象である。すべての経路を同じ割合で弱く刺激する部分作動性とは異なり、基準リガンドと比較した経路間の反応順位の変化として評価する。
イメージ
受容体を単純な入切スイッチではなく、押し方によって接続先が変わる多方向スイッチと考える。ある作動薬はGタンパク質経路を強く、別の作動薬はβアレスチン経路を強く動かし、同じ受容体でも作用と副作用の組合せが変わる。
仕組み
Gタンパク質共役型受容体は単一の活性構造だけを取るのではなく、複数の構造状態の集合として存在する。リガンド結合は膜貫通ヘリックス、細胞内ループ、受容体リン酸化様式を変え、Gs、Gi、Gq、GRK、βアレスチン、足場タンパク質への結合しやすさを変化させる。観察される反応はリガンド固有の効力だけでなく、受容体予備能、細胞内効果器の発現量、信号増幅、測定時刻、細胞種に依存する。このため、基準リガンドと基準経路に対して反応を正規化し、複数の濃度反応曲線から相対的な偏りを評価する。結合・解離速度や受容体内在化の時間差によって見かけ上の偏りが生じることもある。特定経路を選択する薬は治療作用を保ちながら有害作用を減らす可能性があるが、どの経路が有益かは組織と病態で異なる。βアレスチンは脱感作だけでなく独自の情報伝達も担う。
例
同じオピオイド受容体作動薬でも、Gタンパク質活性化とβアレスチン動員の相対効率が異なるものがある。ただし、培養細胞や動物で測定した偏りが、ヒトの鎮痛作用や呼吸抑制へそのまま対応するとは限らず、内活性と受容体予備能を分けて評価する必要がある。