定義
時間薬理学は、生体リズムが薬物動態、薬力学、疾患の病態へ与える影響を研究し、投与時刻を治療設計へ組み込む分野である。吸収・分布・代謝・排泄の日内変動、受容体や生理応答の時刻依存性、疾患症状の時間的変化を区別して評価し、必要な時間帯へ薬効を合わせる。
イメージ
同じ用量でも、朝と夜では胃腸運動、肝代謝酵素、腎血流、ホルモン、受容体、疾患活動が異なる。何mg投与するかだけでなく、いつ投与するかを調整すると、症状が強い時間へ効果の頂点を合わせ、副作用が出やすい時間を避けられる可能性がある。
仕組み
視交叉上核を中心とする体内時計と末梢組織の時計は、CLOCK/BMAL1–PER/CRY転写回路によって約24時間のリズムを作る。胃内pH、胃排出、腸管輸送体、肝CYP活性、臓器血流、血漿タンパク、糸球体濾過量などが時刻により変化し、薬物曝露量を変える。受容体発現、細胞内情報伝達、免疫細胞移動、DNA修復、細胞周期にもリズムがあり、薬効と毒性が変化する。病態側にも早朝血圧上昇、夜間喘息、朝の関節リウマチ症状など時間的偏りがある。徐放製剤や就寝前投与により、薬効の頂点を症状の頂点へ合わせることができる。ただし、クロノタイプ、交代勤務、食事、睡眠、年齢、臓器障害により個人の位相はずれる。
例
明け方に症状が強い疾患では、夕方投与や遅延放出製剤を用いて有効濃度の頂点を明け方へ合わせる設計が可能である。半減期の短い薬では投与時刻の影響が大きくなりやすく、半減期が長く濃度変動が小さい薬では差が目立たないことがある。