定義
エピスタシスは、一つの遺伝子座による表現型への効果が、別の遺伝子座によって隠されたり、強められたり、弱められたり、逆転したりする遺伝的相互作用である。古典遺伝学では、二重変異体の表現型から遺伝子の作用順序を推定する質的関係を指す。量的遺伝学では、二つの遺伝要因を合わせた効果が、各効果を単純に足した期待値からずれる統計学的相互作用を指す。生物学的相互作用と統計学的相互作用は関連するが同一ではない。
イメージ
遺伝子Aを変えても、遺伝子Bが作る必須部品がなければAの影響は表面に現れないことがある。二つのスイッチが同じ回路にあり、一方の状態によって他方の効果が変わるため、各遺伝子の効果を単純に足すだけでは表現型を予測できない。
仕組み
劣性エピスタシス、優性エピスタシス、重複遺伝子作用などは、メンデル比が変形した分離比として観察される。直列の代謝経路では、上流酵素が欠損すると下流遺伝子の違いが表現型へ現れなくなり、二重変異体解析から作用順序を推定できる。並列経路に冗長性がある場合、一方だけの欠損は軽いが、両方を失うと重い表現型となる合成的相互作用が生じる。複雑形質では回帰モデルに遺伝要因同士の積の項を加え、加算尺度または乗算尺度からのずれを評価する。ただし結果は標本数、多重検定、対立遺伝子頻度、集団構造、選んだ尺度に大きく左右される。浸透率や環境との相互作用も、見かけ上のエピスタシスを生む。分子間接触、共発現、経路情報を統合して、生物学的意味を検証する必要がある。
例
色素合成経路の上流酵素が欠損すると、下流の色調決定遺伝子の対立遺伝子差が見えなくなる。DNA修復の並列経路を二つ同時に失うと、どちらか一方の欠損を大きく超える重い表現型が出ることがある。一方、ヒト疾患の統計モデルで遺伝子間相互作用項が有意でも、タンパク質同士が直接結合するとは限らない。