定義
フリップフロップ型薬物動態は、経口、皮下、筋肉内、持続性製剤などの血管外投与で、吸収速度定数が消失速度定数より小さいとき、観察される終末半減期が全身からの消失ではなく遅い吸収によって決まる現象である。通常は吸収の方が速いという関係が反転して見えることから、この名称が使われる。
イメージ
体内へ入った薬を処理する速さより、投与部位から少しずつ流れ込む速さの方が遅い状態である。血中濃度の長い尾を見ても、身体が薬をゆっくり分解しているとは限らず、投与部位から薬が長く補給され続けている可能性がある。
仕組み
一次吸収を仮定した1区画モデルでは、血中濃度は消失速度定数と吸収速度定数に基づく二つの指数項の差で表され、終末相は小さい方の速度定数に支配される。通常、吸収が消失より速ければ終末相は消失速度を反映する。しかし吸収の方が遅ければ、終末相は吸収速度を表し、見かけの半減期が延長する。徐放製剤、持続性注射剤、皮下投与の高分子医薬品、リンパ吸収などで起こりやすい。静脈内投与または異なる投与経路・製剤との比較により、本来の消失半減期を区別できる。投与部位での溶解、沈殿、組織透過性、リンパ流が遅い入力を形成する。複数濃度頂値や吸収遅延がある場合は、単純な一次吸収モデルでは十分に表せない。
例
皮下投与したモノクローナル抗体の終末半減期が静脈内投与時より長く見える場合、リンパ系からの遅い吸収が終末相を支配している可能性がある。持続性注射剤の中止後も血中濃度が長く続くのは、投与部位から薬物が放出され続けるためである。