定義
免疫血栓症は、単球、好中球、血小板、血管内皮、補体、凝固因子が連携し、感染局所の微小循環内にフィブリン・血小板を主体とする血栓を形成して病原体の拡散を制限する宿主防御機構である。局所で適度に働けば有益だが、制御を失って全身化すると、血栓性炎症、播種性血管内凝固、微小循環不全による臓器障害へ進む。
イメージ
感染部位を血栓の網で囲み、病原体をその場に閉じ込めて免疫細胞が処理しやすくする仕組みである。しかし網が全身へ広がると、正常な微小血管まで塞ぎ、血小板と凝固因子を消費して、臓器虚血と出血傾向を同時に起こす。
仕組み
病原体認識受容体が刺激された単球と血管内皮は組織因子を発現し、トロンビン生成を開始する。血小板はPセレクチン、CD40L、自然免疫受容体などを介して白血球と結合し、ポリリン酸や凝固反応に適したリン脂質面を提供する。好中球細胞外トラップはDNA・ヒストンを骨格として病原体を捕捉する一方、第XII因子活性化、組織因子提示、天然抗凝固因子分解を促す。補体C5aは組織因子発現と好中球細胞外トラップ形成を増やし、トロンビンはPARを介して炎症を増幅する。血管内皮グリコカリックスの脱落、トロンボモジュリン–プロテインC系の低下、PAI-1上昇によって抗凝固・線溶の均衡が崩れる。敗血症では広範な微小血栓、血小板消費、フィブリン沈着、線溶異常が臓器障害を生む。
例
細菌性敗血症では、単球組織因子発現、血小板活性化、好中球細胞外トラップ形成が同時に進み、腎臓や肺の微小血管にフィブリンが沈着する。局所膿瘍周囲の凝固は感染隔離に役立つが、全身性活性化はDICへ移行する。