定義
頭蓋内コンプライアンスは、頭蓋内容積の変化に対して頭蓋内圧がどの程度変化するかを示す性質であり、概念的には容積変化を圧変化で割った値として表される。閉鎖性頭蓋内では、脳実質、血液、脳脊髄液の総容積はほぼ一定に保たれる。病変が増えても初期には脳脊髄液排出や静脈血減少で代償できるが、その予備能を使い切ると圧–容積曲線は急峻になる。
イメージ
硬い容器へ物を追加する場面を考える。最初は内部の液体や静脈血を押し出して場所を作れるため圧はあまり上がらない。しかし逃がせる成分がなくなると、同じ1 mLの追加でも圧が大きく上昇する。
仕組み
腫瘤、浮腫、血腫、脳脊髄液増加が生じると、まず脊髄くも膜下腔への脳脊髄液移動、脳脊髄液吸収増加、頭蓋内静脈血排出が代償する。コンプライアンスが低下すると、動脈拍動や呼吸性静脈圧変動が頭蓋内圧へ強く伝わり、圧波の振幅が増える。さらに頭蓋内圧上昇で脳灌流圧が低下すると、虚血性血管拡張により脳血液量が増え、圧上昇が自己増幅することがある。圧–容積関係は直線ではなく指数関数的で、同じ頭蓋内圧でも曲線上の位置によって追加病変への耐性が異なる。体位、静脈圧、PaCO₂、脳脊髄液流出抵抗もこの関係を変える。
例
すでに浮腫や脳脊髄液循環障害がある場合、小さな血腫でも急激な頭蓋内圧上昇を起こし得る。一方、緩徐に拡大する病変では代償が働き、症状の出現が遅れることがある。咳やいきみによる静脈圧上昇は、コンプライアンスが低い例ほど大きな圧変動を生じさせる。