定義
機構に基づく酵素阻害は、阻害物質が標的酵素の触媒反応を受けて反応性中間体となり、その中間体が酵素の活性部位または補欠分子族へ共有結合したり、非常に安定した複合体を作ったりして、酵素活性を時間依存的に低下させる現象である。自殺基質型阻害とも呼ばれ、薬物代謝ではCYPの時間依存性阻害の重要な機序となる。
イメージ
酵素が偽の基質を通常どおり処理しようとした結果、自分自身を失活させる物質を作ってしまう。阻害薬を血中から除いても、すでに失活した酵素はすぐには戻らず、新しい酵素が合成されるまで作用が残る。
仕組み
阻害物質はまず酵素へ可逆的に結合し、触媒反応によって反応性中間体へ変換される。この中間体が活性部位アミノ酸やヘムへ結合すると、不活性な酵素–阻害物質複合体が形成される。失活の最大速度はkinact、失活が半最大となる濃度はKIで表される。試験管内では、酵素と阻害物質をあらかじめ反応させる時間が長いほど、またCYP反応に必要なNADPHが存在するほど阻害が強くなる。通常の競合阻害と異なり、阻害物質の濃度が下がった後も酵素の新生まで作用が持続する。CYPでは、代謝中間体がヘム鉄と安定な複合体を作る準不可逆的阻害もある。臨床的な薬物相互作用の大きさは、阻害薬曝露量、併用薬の代謝寄与率、腸管・肝臓の酵素量、酵素新生速度で決まる。
例
ある薬物が特定CYPで酸化された後にヘムへ強く結合する中間体を作ると、同じCYPで代謝される併用薬のクリアランスが数日間低下することがある。阻害薬の血中濃度が消失しても相互作用が残り、酵素が新たに合成されるにつれて徐々に回復する。