定義
代謝柔軟性とは、栄養状態、ホルモン環境、運動強度、組織のエネルギー需要に応じて、糖、脂肪酸、ケトン体などの利用比率を変える能力である。ランドル回路は、脂肪酸酸化の亢進が糖酸化を抑え、逆にインスリン作用と糖利用の亢進が脂肪酸供給・酸化を抑える相互調節を示す古典的な考え方である。
イメージ
複数の燃料を常に最大量で燃やすのではなく、状況に合う燃料へ配管を切り替える仕組みと考える。脂肪酸を大量に燃やしている時には、糖を分解する経路へ「今は優先しない」という信号が戻る。
仕組み
脂肪酸β酸化でアセチルCoAとNADHが増えると、ピルビン酸脱水素酵素が抑制される。クエン酸の増加はホスホフルクトキナーゼ1を抑え、解糖系の流量を減らし得る。その結果、グルコース6リン酸が増え、ヘキソキナーゼや糖取り込みにも影響する。一方、食後にインスリンが上昇すると、脂肪組織の脂肪分解が抑制され、骨格筋ではGLUT4の膜移行と糖利用が増える。マロニルCoA増加はCPT1を抑制し、脂肪酸のミトコンドリア流入を減らす。実際の代謝柔軟性は基質競合だけでなく、ミトコンドリア量、酵素発現、血流、細胞内脂質中間体にも左右される。
例
絶食時の骨格筋では脂肪酸利用が高く、食後にはインスリン作用により糖酸化へ切り替わる。運動強度が上がると迅速なATP供給が必要になり、糖利用の割合が高まる。肥満や2型糖尿病では、食後にも脂肪酸酸化優位が残るなど、燃料切替が鈍くなることがある。