定義
代謝性血管拡張とは、組織の酸素消費、ATP分解、イオン移動、代謝産物蓄積を局所抵抗血管の弛緩へ変換する調節である。活動性充血、虚血解除後の反応性充血、冠血流調節、運動筋血流の主要な構成要素であり、全身性の交感神経性血管収縮が働いていても、活動組織へ選択的に血流を配分する。
イメージ
働いている組織が、自ら『燃料が必要』という化学信号を近くの血管へ出す仕組みである。中枢が細い血管一本ずつへ指令しなくても、ATPを多く使った部位ほど血流を増やせる。
仕組み
細胞外K⁺が軽度に上昇すると、内向き整流K⁺チャネルとNa⁺/K⁺-ATPアーゼを介して血管平滑筋が過分極し、弛緩する。ATP分解で生じるアデノシンはA₂受容体–cAMP経路を介して拡張を促し、特に冠循環で重要である。CO₂、H⁺、乳酸、低酸素、無機リン酸、浸透圧変化も、平滑筋へ直接作用するか、血管内皮の一酸化窒素やプロスタノイド産生を介して拡張を起こす。赤血球や内皮から放出されるATP・一酸化窒素関連信号も関与する。支配的な因子は臓器、刺激、時間によって異なり、複数経路が重なるため、一つを阻害しても血流応答が残ることがある。
例
運動開始後、骨格筋血流は局所代謝産物、筋ポンプ、内皮性信号によって急速に増加する。心筋は安静時から酸素抽出率が高いため、酸素需要増加を主に冠血流増加で補い、アデノシン、K⁺、一酸化窒素などが関与する。血流遮断解除後の反応性充血では、虚血中に蓄積した拡張因子と筋原性弛緩が働く。