定義
酸素カスケードとは、環境中の酸素が換気、肺胞ガス交換、血液運搬、組織灌流、組織内拡散を経てミトコンドリアへ届くまでの酸素分圧低下を段階別に整理する概念である。各段階の分圧差が次の移動を駆動するため、どこで異常な落差が生じているかを調べることで、低酸素の原因を換気、肺、血液、循環、組織利用のどこに求めるか考えやすくなる。
イメージ
高い場所の貯水池から、複数の堰を越えて末端へ水が届く流れに似ている。加湿、肺胞換気、肺胞から動脈血への移動、組織への抽出で少しずつ圧が下がる。どの段階で落差が大きいかを見れば、障害部位を推定できる。
仕組み
乾燥大気の酸素分圧は大気圧と吸入酸素濃度で決まる。吸気は上気道で加湿され、水蒸気圧の分だけ酸素分圧が低下する。肺胞酸素分圧は肺胞気式によって吸入酸素濃度、大気圧、動脈血二酸化炭素分圧、呼吸商から推定される。肺胞から動脈血へ移る段階では、換気血流比不均等、シャント、拡散制限によって肺胞気–動脈血酸素分圧較差が生じる。血中酸素の大部分はヘモグロビンへ結合して運ばれ、末梢毛細血管で組織へ拡散する。細胞内とミトコンドリアの酸素分圧はさらに低い。動脈血酸素分圧が正常でも、ヘモグロビン量や血流が不足すれば組織への酸素供給は低下する。
例
高地では大気段階から酸素分圧が低くなるため、カスケード全体が低下するが、肺胞気–動脈血較差は必ずしも増えない。肺炎では肺胞から動脈血への落差が増える。貧血では動脈血酸素分圧が正常でも血中酸素含量が低い。ショックでは動脈血酸素化が保たれていても、組織への血流が不足する。