定義
多面発現は、一つの遺伝子、遺伝子変異、または分子経路が、複数の一見異なる表現型へ影響する性質をいう。遺伝子産物が多くの組織に発現する、共通する細胞機能を担う、発生経路の上流に位置する、ホルモンや細胞外基質のように全身へ作用する場合に生じる。原因から一つの形質を介して別の形質へ影響する垂直的多面発現と、独立した複数経路へ作用する水平的多面発現を区別することがある。
イメージ
一つの設計図が眼、骨、血管など別々の組織で共通部品として使われていれば、その設計図の異常は複数臓器へ現れる。また、発生初期の上流スイッチが変化すると、多数の下流形質が連鎖的に変わる。
仕組み
分子的多面発現では、同じタンパク質が複数の細胞種で異なる相手分子と働く。発生学的多面発現では、初期転写因子や情報伝達経路の異常が複数臓器の形成へ波及する。垂直的多面発現は、遺伝子変異が形質Aを変え、その結果として形質Bも変わる因果連鎖である。水平的多面発現は、同じ遺伝子変異が互いに独立した経路で形質Aと形質Bへ作用する。ゲノムワイド関連解析で一つの遺伝子座が複数形質と関連しても、同一の原因変異が両方へ作用するのか、連鎖不平衡にある別変異がそれぞれ作用するのかを共局在解析などで検討する必要がある。メンデルランダム化解析では、操作変数が曝露以外の水平的経路を通って転帰へ影響すると、因果推論に偏りが生じる。
例
細胞外基質タンパク質の遺伝子変異が、骨格、眼、水晶体、血管壁など複数臓器の症状を生むのは、同じ遺伝子産物が多組織で働くためである。脂質関連変異がLDLコレステロールを変え、その結果として冠動脈疾患危険も変える場合は垂直的な因果連鎖である。