定義
シナプス前抑制とシナプス前促通は、シナプス後細胞の膜興奮性を直接変えるのではなく、伝達物質を放出する軸索終末へ作用して放出量を調節する機構である。軸索–軸索シナプス、代謝型受容体、終末膜電位の変化などを介し、同じニューロンの別の終末を保ちながら特定の入力だけを選択的に制御できる。
イメージ
受け手側の音量を変えるのではなく、送信機の出力を回線ごとに絞る、または増幅する仕組みである。同じ感覚ニューロンでも、脊髄のある終末だけを弱め、別の分枝は保つことができるため、感覚入力の門として働く。
仕組み
脊髄の一次求心性終末では、GABA作動性の軸索–軸索入力がGABAA受容体を開く。終末内のCl⁻平衡電位が比較的高いため脱分極が生じるが、持続脱分極によるNa⁺チャネル不活化と膜コンダクタンス増加による短絡効果によって、到達する活動電位が小さくなり、Ca²⁺流入と伝達物質放出が減る。GABAB受容体、α₂アドレナリン受容体、オピオイド受容体などのGi/o共役型受容体も、Ca²⁺チャネル抑制やK⁺チャネル調節を介して放出を減らす。逆に、終末内残存Ca²⁺の増加、K⁺電流の低下、cAMP経路の活性化は放出確率を上げ、シナプス前促通を起こす。
例
脊髄では局所介在ニューロンや下行性経路が、触覚・痛覚求心終末を選択的に抑え、感覚入力を調節する。短期促通では、前の活動電位で残ったCa²⁺によって次の刺激時の小胞放出確率が高くなる。