定義
肺拡散能は、単位時間あたりのガス移動量を、肺胞気と肺毛細血管血の平均分圧差で割った値である。臨床では一酸化炭素の毛細血管血中分圧をほぼゼロとみなせる性質を利用し、一酸化炭素肺拡散能DLCOを測定する。DLCOは肺胞表面積、肺胞–毛細血管膜の厚さ、肺毛細血管血液量、ヘモグロビン量、換気分布などの影響を受ける総合指標である。
イメージ
肺胞から血液へガスが渡る橋の通りやすさと考える。橋の面積が広く壁が薄いほど通りやすいが、血液側でガスを受け取るヘモグロビンが少なくても、全体の移動量は減る。
仕組み
Fickの拡散法則により、膜を通るガス量は表面積、拡散係数、分圧差に比例し、膜厚に反比例する。一酸化炭素は膜を通過した後にヘモグロビンへ強く結合するため、全体の拡散抵抗は肺胞膜を通る抵抗と、赤血球内でヘモグロビンへ結合する抵抗の和として考えられる。Roughton–Forsterの関係では、1/DLCO = 1/DM + 1/(θ×Vc)と表される。DMは肺胞膜側の拡散能、θは一酸化炭素とヘモグロビンの反応速度、Vcは肺毛細血管血液量である。測定値は肺胞気量、ヘモグロビン濃度、一酸化炭素ヘモグロビン、息止め時間、肺血流分布にも依存する。
例
肺気腫では肺胞壁破壊による表面積減少、間質性肺疾患では膜厚増加によりDLCOが低下する。貧血では肺構造が正常でもヘモグロビンという受け皿が減るため低値となる。肺胞出血では肺胞内のヘモグロビンが一酸化炭素を結合し、見かけ上DLCOが高くなることがある。