定義
量子的放出とは、一個のシナプス小胞に含まれる伝達物質の放出を一量子とみなし、刺激時のシナプス後応答を、一量子あたりの応答と放出された小胞数の組合せとして捉える考え方である。活動電位がない時にも、一小胞由来の微小シナプス後電位が自発的に生じる。刺激時には多数小胞が確率的かつ同期的に放出され、その総和として大きな応答が形成される。
イメージ
伝達物質を連続的に注ぐのではなく、ほぼ一定量を含む小包をいくつ発送するかで信号の強さを変える仕組みである。一小包の効果が量子サイズ、発送される小包数が量子含量に相当する。
仕組み
各活性帯には、融合可能な小胞と電位依存性Ca²⁺チャネルが近接して配置される。活動電位による局所Ca²⁺上昇に応じて、それぞれの小胞が一定確率で融合する。平均シナプス応答は概念的に、利用可能な放出部位数n、放出確率p、一量子の応答qの積で表される。シナプス前促通は主にpを、シナプス後受容体数の変化はqを、活性帯数や即時放出可能小胞プールの変化はnを変える。Ca²⁺濃度と放出量の関係は強い非線形性を持つため、わずかなCa²⁺変化でも小胞放出数が大きく変わり得る。
例
神経筋接合部では、活動電位がない時にも微小終板電位が観察される。その平均振幅は一小胞由来応答の目安となり、刺激時終板電位の平均振幅との比から量子含量を概算できる。中枢シナプスでは放出失敗が起こりやすく、短期可塑性は放出確率と小胞枯渇の変化として解析される。