定義
輸送最大量(Tm)は、尿細管の担体輸送系が飽和したときに単位時間あたり輸送できる最大量である。スプレイ現象は、血漿濃度や濾過負荷が増加した際、理論上の一つの鋭い閾値で突然排泄が始まるのではなく、Tmへ達する前から少量の尿中排泄が徐々に現れる曲線の丸みをいう。腎でのグルコース再吸収が代表例である。
イメージ
処理能力の異なる多数のレジが並ぶ店舗を考える。店舗全体の最大処理量には上限があるが、性能の低いレジから先に混雑し始めるため、全てのレジが同時に限界へ達するわけではない。その結果、待ち行列はある一点で急に生じるのではなく、徐々に増える。
仕組み
物質の濾過負荷は概ねGFR × 血漿濃度で決まり、濾過負荷の増加に伴って尿細管再吸収量も増える。しかし担体数と輸送周期には上限があり、飽和すると再吸収量はTmで頭打ちになる。グルコースでは、それを超えた濾過負荷が尿中へ排泄される。実際には各ネフロンのGFR、担体数、局所濃度、輸送閾値が均一ではなく、個々の担体もミカエリス・メンテン型に漸近的に飽和するため、全腎の排泄曲線にはスプレイが生じる。このため尿糖は理論上のTm到達点より低い血糖域から少量出現し得る。
例
血糖が上昇するとグルコースの濾過負荷が増え、腎閾値付近から尿糖が検出され始める。さらに血糖が上昇すると再吸収量はTmへ近づいて頭打ちとなり、それ以上の濾過負荷はほぼそのまま尿中排泄量の増加として現れる。