定義
限定分解とは、タンパク質全体を分解するのではなく、決められたペプチド結合を切断して立体構造、活性部位、局在、他分子との結合性を変える翻訳後制御である。不活性な酵素前駆体、プロホルモン、凝固因子、補体成分などを、必要な場所と時点で働かせるために用いられる。切断後は元の状態へ戻せないことが多く、迅速で増幅性の高い反応に向く。
イメージ
完成済みの装置から安全ピンだけを外すイメージである。装置そのものはすでに作られているため、切断されるとすぐに作動できる。ただし一度始動すると戻せないので、保管場所、活性化部位、阻害因子による管理が重要になる。
仕組み
前駆体は、シグナルペプチド、プロペプチド、活性化ペプチドなどの切断を受ける。切断によって活性部位が露出する、サブユニットの配置が変わる、膜への結合性が変化するなどして機能が発現する。消化管ではエンテロペプチダーゼがトリプシノーゲンをトリプシンへ変え、トリプシンが他の消化酵素前駆体を連鎖的に活性化する。凝固系や補体系では、少量の上流酵素活性が次段階を次々に活性化し、大きな反応へ増幅される。セルピンなどの阻害タンパク質や反応場所の限定が暴走を防ぐ。プロホルモン変換酵素は細胞種ごとに異なる切断を行い、同じ前駆体から異なる産物を生じさせることがある。
例
プロインスリンは分泌顆粒内で切断され、インスリンとCペプチドになる。膵消化酵素は不活性な前駆体として合成・貯蔵され、十二指腸内で活性化されることで膵臓の自己消化を防いでいる。