急性腎障害(AKI)は、短期間に腎機能が低下する症候群である。血清クレアチニンの変化と尿量から捉え、腎前性・腎性・腎後性の原因を探しながら、電解質と体液の異常に対応する。
最終更新日: 2026年10月27日
急性腎障害(AKI)は、短期間に腎機能が低下する症候群である。血清クレアチニンの変化と尿量から捉え、腎前性・腎性・腎後性の原因を探しながら、電解質と体液の異常に対応する。
腎臓への血流不足、腎実質の傷害、尿の流出路の閉塞などで、老廃物や水・電解質の調節が障害される。脱水・出血・心不全などの腎前性要因、敗血症や虚血、腎炎、薬剤性障害などの腎性要因、尿路閉塞による腎後性要因に分けると整理しやすい。複数が重なり、経過の中で変化することもある。
腎前性の血流不足が長引けば尿細管傷害へ進むことがある。一方、心不全では全身の水分が多くても腎の有効な灌流が不足しうる。AKIだから一律に補液する、という理解では体液過剰を悪化させる場合がある。
KDIGO 2012基準では、①48時間以内に血清クレアチニンが0.3 mg/dL以上上昇、②7日以内に基準値の1.5倍以上へ上昇したことが判明または推定、③尿量0.5 mL/kg/時未満が6時間以上、のいずれかでAKIと診断する。クレアチニンが検査室の基準範囲内でも、以前からの変化が大きければ該当しうる。
クレアチニン上昇は傷害より遅れることがあり、筋肉量や体液量の影響も受ける。尿量が保たれるAKIもある。診断と重症度評価では両方を確認し、急速に変化する腎機能に通常のeGFRをそのまま当てはめない。
無症状で検査から判明する場合も、乏尿、浮腫、呼吸困難、食欲低下、倦怠感などで見つかる場合もある。尿量低下があればカテーテルの閉塞や尿閉も確認する。排尿があるから両側尿路閉塞はない、と断定しない。
重い高カリウム血症、肺水腫、代謝性アシドーシス、尿毒症に伴う意識変容などは急いで評価する。腎機能の原因検索と、生命に関わる合併症の管理を同時に進める。
以前の腎機能、発症時期、尿量、体重、血圧、薬剤・造影剤・感染の経過を確認する。尿検査・尿沈渣、電解質、超音波などを組み合わせる。血尿や赤血球円柱は糸球体病変を、腎盂拡張は尿路閉塞を考える手掛かりになるが、所見の有無だけで確定・除外しない。
尿中ナトリウムやFENaなども参考になるが、利尿薬、慢性腎臓病、敗血症などで解釈が変わる。FENaが低いから補液だけで治る、と短絡しない。急速進行性糸球体腎炎が疑われる場合などは腎臓専門医と速やかに相談する。
可逆的原因を取り除く。循環血液量不足では適切に体液を補い、うっ血では体液管理を行い、閉塞では解除を検討する。感染源への対応、腎毒性薬剤の見直し、腎機能に応じた薬剤投与量の調整を行う。治療反応は尿量、体重、循環、電解質、クレアチニンの推移から確かめる。
利尿薬は体液過剰の管理に使うことがあるが、尿を増やすことと腎傷害を治すことは同じではない。治療抵抗性の高カリウム血症、肺水腫、重いアシドーシスなどでは腎代替療法を判断する。透析開始をクレアチニンの単一の数値だけで決めない。
AKIが改善しても慢性腎臓病の発症・進行リスクは残りうるため、退院後も腎機能と尿所見を確認する。
たとえば普段のクレアチニン0.7 mg/dLが48時間で1.1 mg/dLになれば、絶対値が軽度でも0.4 mg/dLの上昇としてAKIを考える。下痢の脱水だけでなく、服薬や感染、尿路閉塞の有無を確認する。
尿量が少ないときには、採尿の誤差やカテーテルの閉塞、尿閉を確かめてから腎での尿産生低下を考える。尿量が増えた場合も、利尿薬の影響や回復期の水・電解質喪失があり、量だけで腎機能が回復したと判断しない。体重、入出量、循環、電解質を連続して見ることが大切である。
クレアチニンは一度上がると、原因を取り除いてもすぐには下がらない場合がある。一方、大量の体液がたまると希釈され、実際の傷害より低く見えることがある。基準値からの変化と時間、治療中の体液量を合わせて解釈する。筋肉量の少ない人では小さな上昇も見逃さない。
薬剤調整では、処方薬だけでなく市販の鎮痛薬、サプリメント、直近の検査や感染治療を確認する。腎臓を守るための薬剤見直しと、感染などの原因治療を中断しないことの両方を考える。薬をすべて止めるという一律の対応ではなく、利益と危険を評価する。
AKIは一度のクレアチニン高値という病名ではなく、時間と変化を含む診断である。以前の値が不明な場合は、その不確実性を残して評価する。診断基準の数値を覚える際も、「48時間」「7日」「6時間」という観察期間を必ずセットにする。
急性尿細管壊死(ATN)は、腎臓の尿細管上皮細胞が虚血や毒性物質によって壊死・脱落し、急激な腎機能の低下(急性腎障害:AKI)をきたす疾患。腎性AKIの中で最も頻度が高く、脱水などによる「腎前性AKI」との鑑別が重要である。
水腎症は、尿路の通過障害(閉塞)により尿が滞留し、上流の腎盂および腎杯が拡張した状態である。CBTや国試では、両側性と片側性の原因の鑑別、エコーでの診断、および水腎症感染や腎後性腎不全時の緊急ドレナージ(腎瘻・ステント)が重要である。
RPGNは、血尿・蛋白尿などの腎炎所見とともに、数週から数か月の経過で腎機能が急速に低下する臨床症候群である。腎生検で半月体形成を認めることが多く、原因の同定と治療の判断を急ぐ。
慢性腎臓病(CKD)は、腎障害を示す所見、またはGFR 60 mL/分/1.73 m²未満が3か月以上続く状態である。腎機能の数値だけでなく、原因と蛋白尿・アルブミン尿を合わせて重症度と将来の危険を考える。
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