医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
肺血栓塞栓症は、主に下肢や骨盤内の深部静脈に形成された血栓が血流に乗って肺動脈を閉塞する致死的な疾患である。「エコノミークラス症候群」としても知られ、突然の呼吸困難や胸痛をきたす。Dダイマーの上昇と造影CTでの血栓(造影欠損)の証明が診断の鍵となる。
突然の呼吸困難、胸痛(胸膜炎様痛)、冷汗、頻脈。
重症例(広範な塞栓)では、失神、ショック(血圧低下)、心停止をきたす。
※約半数で深部静脈血栓症(DVT)による下肢の片側性腫脹、疼痛(Homan徴候など)を伴う。
初期評価
リスク因子を有する患者の突然の呼吸困難やショックから直ちに疑い、SpO2低下と頻脈を確認する。
検査
①血液検査:『Dダイマー』の高値(血栓形成・線溶亢進のマーカー)。右心負荷によるBNPやトロポニンの上昇。
②心電図:洞性頻脈、右心負荷所見(S1Q3T3パターン、不完全/完全右脚ブロック、V1〜V3の陰性T波)。
③胸部造影CT(第一選択・確定診断):肺動脈内の『造影欠損(filling defect)』を証明する。
④心エコー:右室の拡大、左室の圧排(D-shape)、三尖弁逆流圧較差(TRPG)の上昇。
⑤下肢静脈エコー:発生源であるDVTの有無を確認する。
治療方針
重症度(血行動態の不安定さ)に応じて治療法を選択する。
①血行動態が安定している場合:酸素投与等の全身管理を行いつつ、『抗凝固療法(未分画ヘパリンの静注、またはDOAC・ワルファリンの内服)』を開始し、血栓の増大を防ぐ。
②血行動態が不安定(ショック、低血圧)な場合:直ちに『血栓溶解療法(t-PA静注)』を行い、詰まった血栓を溶かして肺血流を再開させる。t-PAの禁忌例や無効例、心停止切迫例では、カテーテル的血栓破砕・吸引術や外科的血栓摘除術を考慮し、必要に応じてPCPS(VA-ECMO)を導入する。
予防
早期離床、弾性ストッキングの着用、間欠的空気圧迫装置の装着。抗凝固療法が禁忌でDVTが残存している場合は、肺への再塞栓を防ぐため『下大静脈(IVC)フィルター』を留置する。
病態
Virchow(ウィルヒョウ)の3原則(血流のうっ滞、血液凝固能の亢進、血管内皮の障害)により深部静脈血栓症(DVT)が生じ、その血栓が遊離して肺動脈に詰まる。これにより換気血流不均等(V/Qミスマッチ)が生じて低酸素血症となり、肺動脈圧の急激な上昇から右心負荷・閉塞性ショックをきたす。
試験・臨床での重要ポイント
「長期臥床(術後など)、長時間の飛行機移動、妊娠、悪性腫瘍、ピル(経口避妊薬)内服中」の患者が、「突然の呼吸困難と胸痛」を訴えるエピソードが超定番。
心電図での『S1Q3T3パターン(I誘導で深いS波、III誘導で異常Q波と陰性T波)』や右脚ブロックは右心負荷を反映する頻出所見である。血液検査では血栓の存在を示す『Dダイマー』が上昇し、これが陰性であれば本疾患をほぼ否定できる(除外診断に有用)。確定診断は『造影CT』である。
覚え方・コツ
「PTE(肺塞栓)は『足の血栓が肺に飛ぶ(エコノミークラス症候群)』!手術の後や飛行機に乗った後に、急に息が苦しくなって胸が痛くなる。心電図は『S1Q3T3』。血液検査で『Dダイマー』が高かったら、すぐに『造影CT』を撮って肺動脈の詰まり(黒く抜ける造影欠損)を探せ!血圧が下がっている重症例にはt-PA(血栓溶解薬)で一気に溶かす!」
ここで読んだ内容を、AIや関連コンテンツでそのまま深掘りできます。
Dressler(ドレスラー)症候群は、急性心筋梗塞の発症から「数週間〜数ヶ月後」に、発熱や胸膜炎様胸痛を伴って発症する自己免疫性の「心膜炎(および胸膜炎)」である。
産褥心筋症は、それまで心疾患の既往がない女性が、妊娠末期から産後(産褥期)数ヶ月の間に突然発症する特発性の心不全。拡張型心筋症(DCM)と同様に左室の拡張と収縮能低下をきたす。母体の生命を脅かす重篤な疾患である。
拘束型心筋症は、心室壁が著しく硬くなり(コンプライアンス低下)、拡張不全(血液が心室に入りにくい)をきたす特発性心筋症。収縮能と壁厚は正常に近いが、著明な心房拡大と右心不全症状を特徴とする。予後は極めて不良である。
急性心筋炎は、主にウイルス感染などを契機として心筋に急性の炎症が生じる疾患。軽症例から、数時間〜数日で致死的な心不全やショックに至る「劇症型心筋炎」まで重症度は様々。若年者の突然の心原性ショックの原因として重要である。