尿蛋白/クレアチニン比は、随時尿の蛋白濃度を尿中クレアチニン濃度で割った値です。尿の濃さの影響を補正し、蛋白排泄量の目安を得ます。eGFRが濾過機能を表すのに対し、蛋白尿は腎障害や将来のリスクを考える別の軸です。
その他
尿中蛋白は濃縮尿では高く、希釈尿では低く測られやすくなります。そこで、同じ尿のクレアチニンを分母に使い、尿の濃さをある程度補正します。単位は一般にg/gCrで、1日の尿蛋白排泄量(g/日)をおおよそ推定する手がかりになります。全例で24時間蓄尿を行わずに経過を追える点が利点です。
ただし尿クレアチニン排泄量は筋肉量などによって異なるため、完全な補正ではありません。小柄・筋肉量低下の人では分母が小さくなり、比が大きめに出ることがあります。臨床上重要な判断で値に疑問があるときは、反復測定や蓄尿などを検討します。
日本腎臓学会のCKD評価では、0.15g/gCr以上の蛋白尿は腎障害の重要な手がかりです。非糖尿病のCKD重症度分類では0.15未満、0.15〜0.49、0.50以上などの区分を用います。糖尿病では尿アルブミンによる区分を使うなど、対象と目的を確認します。
単回の上昇だけで慢性腎臓病と診断しません。発熱、激しい運動、尿路感染、採尿時の混入など、一時的な上昇や解釈を難しくする要因があります。CKDとするには持続性や他の所見も必要で、急性腎炎などでは短期間でも速やかな評価が必要なことがあります。
蛋白尿が多い場合は、糸球体障害、尿細管障害、血中の異常蛋白増加などの機序を考えます。総蛋白を測るUPCRと、アルブミンだけを測るUACRは同じ検査ではありません。尿試験紙は主にアルブミンに反応するため、すべての尿蛋白を同じ感度で検出できるわけではない点も押さえます。
学習例:尿蛋白60mg/dL、尿Cr100mg/dLなら、両者の単位をそろえた比は0.60mg/mg=0.60g/gCrです。これを60g/gCrとしないよう、mg/dLとg/dLの換算に注意します。尿蛋白の濃度が同じでも、尿Crが50mg/dLなら比は1.20g/gCrとなり、尿の希釈度が違うと解釈が変わります。
eGFRが保たれていても蛋白尿が持続する場合は、腎障害を否定できません。反対にeGFR低下があっても、強い蛋白尿が必ず出るわけではありません。血尿、血圧、浮腫、アルブミン、腎機能の推移などを合わせ、原因疾患を調べます。
蛋白尿と血尿が併存する場合や蛋白尿が増加する場合は、糸球体疾患などの可能性を検討します。蛋白量だけから腎生検や治療の要否を機械的に決めるのではなく、経過と全身状態を含めて専門的に判断します。
UPCRは「尿蛋白濃度をそのまま読む」方法より尿の濃さの影響を減らせますが、1日の排泄量の実測値ではありません。試験では、尿試験紙・随時尿蛋白Cr比・24時間蓄尿を目的別に区別します。
復習例:前回0.2、今回1.0g/gCrとなったとき、尿の条件や感染・運動を確認し、必要に応じて再検します。ただし浮腫、血尿、腎機能低下などを伴えば、一時的変動と決めつけて放置しません。検査値の大小だけでなく、持続性と他の異常の組み合わせを説明することが大切です。
尿蛋白が減った場合も、それだけで腎機能が回復したとは言えません。eGFRと蛋白尿を二つの軸として追い、原因、治療、採尿条件と対応させて読むと、CKDの評価の意味が明確になります。
採尿は、患者が同じ条件で提出できるよう説明することも重要です。激しい運動の直後なのか、尿路症状があるのか、月経中なのかなどを記録すれば、再検した値が違った理由を考えやすくなります。採尿条件による変動を認めることと、異常を軽視することは別です。
高い比が続くときは、腎機能が保たれていても原因検索とリスク評価が必要になります。数値の増減を図にする場合は、尿試験紙の段階表示とg/gCrという定量値を同じ尺度として並べないようにします。検査ごとの単位と何を測っているかを明示すると、患者の経過を正しく共有できます。
参考資料 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」第1章(2023) 米国NIDDK「Assess Urine Albumin」(2012)
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