妊娠糖尿病(GDM)は、妊娠中に初めて発見または発症した、糖尿病には至らない糖代謝異常である。妊娠中のホルモン変化によるインスリン抵抗性の増大が原因であり、母体・胎児双方への合併症を防ぐための厳格な血糖管理が求められる。
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母体:通常は無症状(自覚症状は乏しい)。尿糖陽性、羊水過多、妊娠高血圧症候群の合併リスク。
胎児合併症:巨大児(4,000g以上)、肩甲難産、胎児奇形(妊娠前からの高血糖で多い)、流産・死産。
新生児合併症:新生児低血糖(母体高血糖への代償的インスリン過剰が続くため)、低カルシウム血症、多血症、新生児呼吸窮迫症候群(高インスリンが肺サーファクタント形成を阻害)。
スクリーニング:全ての妊婦に対し、妊娠初期および中期(24〜28週)に随時血糖や50gGCT(グルコースチャレンジテスト)を行う。
確定診断:『75gOGTT』を施行し、以下の基準を1つ以上満たす。
空腹時血糖値 ≧ 92 mg/dL
1時間値 ≧ 180 mg/dL
2時間値 ≧ 153 mg/dL
※「妊娠中の明らかな糖尿病」は、空腹時≧126、HbA1c≧6.5%などで診断される。
血糖目標値(非常に厳格):空腹時≦95mg/dL、食後2時間≦120mg/dL。
食事療法:分割食(1日5〜6回)を行い、食後の血糖急上昇を抑える。必要エネルギー量は標準体重×30kcal+付加量。
薬物療法:食事療法で目標を達成できない場合、速やかに『インスリン療法』を開始する。※経口血糖降下薬は原則使用しない。
分娩後:産後6〜12週に再び75gOGTTを行い、耐糖能が正常化したか再評価する(将来の糖尿病発症リスクが高いため継続的なフォローが必要)。
病態
胎盤から分泌されるホルモン(プロゲステロンや胎盤性ラクトゲンなど)がインスリンの働きを妨げる(インスリン抵抗性)。通常は代償的にインスリン分泌が増えるが、不十分な場合に高血糖となる。胎盤を通過する高血糖は胎児に過剰なインスリン分泌を促し、巨大児などの原因となる。
試験・臨床での重要ポイント
診断基準が超頻出。通常の糖尿病診断(HbA1cなど)とは異なり、『75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)』による厳格な数値が設定されている。①空腹時≧92、②1時間値≧180、③2時間値≧153 のいずれか1点でも満たせば診断される。
注意点は『妊娠中の明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy)』との区別。HbA1c≧6.5%や空腹時≧126などは「妊娠糖尿病」ではなく、より重症な「明らかな糖尿病」として扱う。
治療の第一選択は『食事療法』だが、不十分な場合は『インスリン療法』を行う。※経口血糖降下薬は胎盤通過性や安全性の問題から原則禁忌(一部例外あり)である。
覚え方・コツ
「GDMは『お腹の赤ちゃんの健康をかけた血糖値レース』!診断は75gOGTTの『92-180-153』の1点突破!普通の糖尿病より基準が厳しいのは、ちょっとの高血糖でも赤ちゃんが巨大児になったり低血糖で生まれたりするから。飲み薬(経口薬)は赤ちゃんに届いちゃうから使わず、足りない分は『インスリン』を注射で補うのが鉄則!」
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胎児発育不全(FGR)は、超音波による胎児推定体重が基準値(-1.5 SD以下)を下回り、胎児が正常に発育していない状態。原因により、頭も体も小さい「均衡型」と、体だけが痩せ細る「不均衡型」に大別され、管理方針が異なる。
常位胎盤早期剥離は、正常な位置に付着している胎盤が、胎児の娩出「前」に子宮壁から剥がれ落ちる致死的疾患。母体は大量出血とDIC(播種性血管内凝固症候群)に陥り、胎児は酸素供給が絶たれて急速に仮死・胎児死亡に至る。
異所性妊娠は、受精卵が子宮腔以外の場所(約90%以上が卵管膨大部)に着床する異常妊娠。破裂すると腹腔内への大出血を引き起こし、出血性ショックで母体の命に関わる産婦人科領域の最重要救急疾患である。
羊水は主に「胎児の尿」で作られ、「胎児が嚥下(飲み込む)して消化管から吸収する」ことで一定の量が保たれている。このサイクルの破綻により、羊水インデックス(AFI)が24cm以上を「羊水過多」、5cm以下を「羊水過少」と定義する。