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MLF症候群(内側縦束症候群)は、脳幹の内側縦束(MLF)の障害により、側方注視時に患側の眼球が内転できず、健側の外転眼に解離性眼振が生じる眼球運動障害である。輻輳(寄り目)は保たれるのが特徴である。
側方注視時の複視(物が水平に二重に見える)
患眼の内転障害(正中を越えて内側に動かない)
健眼(外転眼)の解離性眼振
※輻輳(寄り目)は保たれる。
※正面視では眼位異常を認めないことが多い。
初期評価
複視を訴える患者に対し、H字型の眼球運動テストを行い、側方注視時の内転障害と外転眼の眼振、および輻輳反射の正常を確認する。
検査
頭部MRI検査(特にT2強調画像やFLAIR画像、拡散強調画像)で、中脳〜橋の背側被蓋(MLFの走行部位)に病変(脳梗塞、多発性硬化症の脱髄斑など)を確認する。若年者でMSが疑われる場合は髄液検査(オリゴクローナルバンド等)も行う。
治療方針
MLF症候群そのものに対する特異的治療ではなく、原因疾患の治療が中心となる。
多発性硬化症(MS)の急性期であれば、『副腎皮質ステロイドのパルス療法』を行う。脳梗塞(脳幹梗塞)であれば、発症時期に応じた抗血栓療法(抗血小板薬など)や脳保護療法を行う。多くの場合、原疾患の改善に伴い眼球運動障害も徐々に軽快する。
病態
側方注視の際、外転神経核(外直筋を動かす)から対側の動眼神経核(内直筋を動かす)へ「一緒に動け」という指令を伝える連絡通路が『内側縦束(MLF)』である。ここが断線すると、外側を向く眼は動くが、内側を向くべき眼がついてこなくなる。
試験・臨床での重要ポイント
「右を見ようとした時、右眼は外側を向くが(眼振を伴う)、左眼が内側を向かない(正中で止まる)」というエピソードであれば、『左のMLF障害』である(内転できない側が患側)。動眼神経自体の麻痺ではないため、『寄り目(輻輳反射)は正常にできる(輻輳中枢からの直接経路はMLFを通らないため)』ことが最大の鑑別ポイントである。
原因として、若年者の両側性MLF症候群を見たら『多発性硬化症(MS)』を、高齢者の片側性MLF症候群を見たら『脳幹梗塞(小血管病変)』を疑うのが国試の鉄則。
覚え方・コツ
「MLF症候群は『横を向く時のチームワーク(連絡網)』の断線!外を向く目はブルブル震え(解離性眼振)、内を向く目は真ん中でストップする(内転障害)。でも直接命令が来る『寄り目(輻輳)』はできる!若者ならMS、年寄りなら脳梗塞!」
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