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無痛性甲状腺炎は、自己免疫異常(主に橋本病がベース)により甲状腺濾胞が無症候性に破壊され、蓄積されていたホルモンが血中に漏れ出すことで一過性の甲状腺中毒症を来す疾患である。CBTや医師国家試験では、亜急性甲状腺炎(痛みあり・炎症反応あり)やバセドウ病(ヨード取り込み亢進)との鑑別、および「経過観察・β遮断薬」という治療方針が毎年問われる超頻出疾患である。
甲状腺中毒症状:動悸、息切れ、多汗、手指振戦、体重減少(バセドウ病と似る)。
※前頸部痛、圧痛、発熱は「ない」(ここが亜急性甲状腺炎との決定的な違い)。
※眼球突出や眼瞼後退などの眼症状は「ない」(ここがバセドウ病との違い)。
初期評価
動悸や体重減少を訴えるが、甲状腺の痛みがない患者で疑う。出産後数ヶ月での発症が多い。
検査
血液検査:FT4高値、TSH低値を認める。自己抗体(抗TPO抗体、抗Tg抗体)は陽性であることが多いが、TRAb(TSHレセプター抗体)は陰性である。
炎症反応:CRP正常、赤沈正常、白血球数正常(亜急性との鑑別の要)。
シンチグラフィ:放射性ヨード(またはテクネチウム)の取り込み率は著明に低下する。
エコー:血流シグナルは低下する(バセドウ病では血流が豊富で「火の海:thyroid inferno」となるのと対照的)。
対症療法・経過観察
数週〜数ヶ月で自然にホルモン値が低下するため、原則として「経過観察(無治療)」とする。
動悸や振戦などの交感神経症状が強い場合のみ、対症療法として「β遮断薬」を投与する。
禁忌・不適切
ホルモン合成が亢進しているわけではないため、「抗甲状腺薬(チアマゾールなど)」は全くの無効である。
また、亜急性甲状腺炎と異なり強い炎症や痛みはないため、「ステロイド」も不要である。
病態
自己免疫による甲状腺濾胞の破壊により、濾胞内の甲状腺ホルモンが血中へ流出する「破壊性甲状腺中毒症」の一つである。数ヶ月で自然に治癒し、一過性の機能低下期を経て正常に戻る(または橋本病本来の機能低下症に移行する)。
試験での重要ポイント
「数週間前から動悸や体重減少があるが、首の痛みや発熱はない。出産後である。」というエピソードが典型的。血液検査ではFT4高値・TSH低値を示すが、亜急性甲状腺炎との最大の違いは『CRP正常・赤沈正常』および『前頸部痛がない』ことである。また、甲状腺シンチグラフィでは濾胞が休止しているため『放射性ヨード取り込み率が低下(真っ白に抜ける)』し、これによってバセドウ病を除外する。治療は自然寛解するため原則として『経過観察』であり、頻脈が強い場合のみβ遮断薬を用いる。抗甲状腺薬は作っていないため無効であり禁忌に近い引っかけ選択肢である。
覚え方・コツ
「無痛性は、痛くない亜急性甲状腺炎。橋本さんの出産後などに起きる。工場が壊れてホルモン漏れ出てるからヨードは取り込まない(低下)。痛くないから赤沈もCRPも正常。勝手に治るから抗甲状腺薬は使わず、しんどい時だけβブロッカー!」と覚える。
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