土壌や環境に広く存在する芽胞形成性グラム陽性桿菌で、通常は低病原性で培養汚染菌となる。免疫不全、注射薬物使用、血管内デバイス留置例では菌血症や心内膜炎の原因となりうる。
Bacillus subtilis
細菌
大型のグラム陽性桿菌であり、培養が古くなるとグラム不定性を示すことがある。内生芽胞は通常のGram染色では淡く染色されるため、菌体内に透明な空隙として観察されることがある。
Bacillus subtilis species complexに属するグラム陽性細菌である。環境適応能力が高く、耐久性の高い内生芽胞(endospore)を形成する。分子生物学や遺伝子工学では代表的なモデル細菌として広く利用されている。
好気性〜通性嫌気性の芽胞形成桿菌で、周毛性鞭毛による運動性を有する。血液寒天培地では大型で乾燥したしわ状・不整形コロニーを形成し、環境中では強い芽胞形成能によって乾燥や熱などに高い耐性を示す。
土壌、塵埃、水、植物、農産物、食品など自然環境に広く分布する。医療環境や製造環境からも検出されることがあり、ヒトの皮膚や消化管から一過性に分離されることもある。
通常は環境中から曝露されても感染を起こさない。外傷、手術、血管内カテーテル、人工弁、人工関節、免疫抑制状態などで無菌部位へ侵入した場合に日和見感染症を起こすことがある。ヒトからヒトへの感染は極めてまれである。
病原性は低いものの、芽胞形成による環境耐性、バイオフィルム形成能、細胞外プロテアーゼやその他の加水分解酵素、表面接着因子などが医療機器関連感染や持続感染に関与すると考えられている。
健常者では病原菌となることは少ないが、免疫不全患者ではカテーテル関連血流感染症、菌血症、感染性心内膜炎、眼内炎、創部感染、人工物感染を起こすことがある。また、一部の菌株では毒素産生により軽度の食中毒様胃腸炎を引き起こすことが報告されている。
血液培養で検出された場合は汚染菌との鑑別が最も重要である。複数セットで陽性となるか、陽性化時間、発熱や炎症所見、留置カテーテルや人工物の有無を総合的に評価する。菌種同定にはMALDI-TOF質量分析法や遺伝子解析を用い、重症感染では薬剤感受性試験を実施する。
単回のみの血液培養陽性や無症候性定着では治療を要しないことが多い。真の菌血症やデバイス関連感染症では感染源となるカテーテル・人工物を可能な限り除去し、薬剤感受性に基づいてバンコマイシン、カルバペネム系、ニューキノロン系などを選択する。治療期間は感染部位や重症度に応じて決定する。
手指衛生や無菌操作を徹底し、注射薬・輸液・医療機器の適切な管理を行うことが重要である。不要な血管内カテーテルや人工デバイスは早期に抜去し、院内感染リスクを低減する。一般向けワクチンは存在しない。
Bacillus subtilisは『芽胞形成』『大型グラム陽性桿菌』『運動性陽性』『土壌由来の環境菌』が重要キーワードである。血液培養で検出されても汚染菌であることが多く、複数セット陽性や人工物留置、免疫不全患者では真の感染を考慮する。国家試験では炭疽菌(Bacillus anthracis)との鑑別が頻出であり、B. subtilisは運動性陽性・病原性が低いのに対し、B. anthracisは運動性陰性・莢膜形成・強力な炭疽毒素を産生する点を整理して覚えることが重要である。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。