脳膿瘍は、脳実質内に細菌が感染・増殖し、被膜に覆われた膿の塊(膿瘍)を形成する疾患。副鼻腔炎や中耳炎などからの直接波及や、先天性心疾患(右左シャント)による血行性感染が原因となり、頭蓋内圧亢進症状をきたす。
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頭蓋内圧亢進症状:持続する激しい頭痛、悪心・嘔吐、うっ血乳頭。
局所神経症状:発生部位に応じた片麻痺、失語、視野障害。
発熱(ただし、膿瘍が被膜化すると熱が出ないことも多い)、けいれん。
頭部MRI(必須):造影T1WIで被膜が白く染まる『リング状増強効果(ring enhancement)』。DWIで膿瘍内部が『著明な高信号』。
血液検査・血液培養:起炎菌の同定。
※腰椎穿刺は脳ヘルニアのリスクが高いため禁忌。
薬物療法(第一選択):血液培養採取後、直ちに髄液移行性の良い広域抗菌薬(第3世代セフェム系 + バンコマイシン + メトロニダゾールなどの多剤併用)を長期間(4〜8週間)静注する。
外科的治療:膿瘍が巨大な場合、脳室に近い場合(破綻すると致死的な脳室炎になる)、保存的治療に抵抗する場合は、穿刺排膿術(ステレオタクティック)や開頭による膿瘍全摘出術を行う。
脳浮腫に対するグリセロール投与。
病態
頭部の感染巣からの直接伝播のほか、血流に乗って菌が運ばれる経路がある。通常、静脈血の細菌は肺の毛細血管(フィルター)で捕捉されるが、ファロー四徴症などの『チアノーゼ性先天性心疾患(右左シャント)』や肺動静脈瘻がある患者では、肺をすり抜けてダイレクトに脳へ菌が到達するため、脳膿瘍のハイリスクとなる。
試験・臨床での重要ポイント
上記の『右左シャント(先天性心疾患)』の合併エピソードが国試で超頻出。
画像問題の決定打は、造影MRI/CTでの『リング状増強効果(ring enhancement)』。さらに転移性脳腫瘍(これもリング状になる)との鑑別において、MRIのDWI(拡散強調画像)を撮ると、ドロドロの粘り気のある膿は水分子の動きが制限されるため『DWIで著明な高信号(真っ白に光る)』のが絶対的な特徴(腫瘍の壊死部は光らない)。
※膿瘍による脳浮腫で頭蓋内圧が極度に上がっているため、腰椎穿刺(ルンバール)は脳ヘルニアを誘発する危険があり原則【禁忌】である。
覚え方・コツ
「脳膿瘍は『脳の中にできたバイキンの袋(膿)』!中耳炎や、心臓の穴(右左シャント:ファロー四徴症など)をすり抜けたバイキンが原因。MRIの造影剤を入れると『ドーナツ状のリング』が見え、DWI(拡散強調)で中身の膿が『真っ白にビカビカ光る』のが腫瘍との違い!頭の中がパンパン(頭蓋内圧亢進)だから、背骨から髄液を抜く検査(腰椎穿刺)は脳が飛び出す(ヘルニア)から絶対ダメ!」
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脳炎は、ウイルスなどが直接脳実質に感染して急性の炎症を引き起こす疾患。日本脳炎など様々あるが、日常診療と国試で圧倒的に重要なのが「単純ヘルペスウイルス(HSV)脳炎」である。側頭葉や前頭葉下部を好んで破壊し、致死率も高い。
てんかんは、大脳のニューロンが過剰に興奮する(てんかん性放電)ことで、反復性の発作をきたす慢性脳疾患。脳の「一部(局所)」から始まる【焦点性発作】と、最初から脳の「全体」が興奮する【全般性発作】に大別され、発作型によって抗てんかん薬を使い分ける。
von Hippel-Lindau病(VHL病)は、第3染色体にあるVHLがん抑制遺伝子の変異により、全身の多臓器に血管芽腫や多発性囊胞、悪性腫瘍を合併する常染色体顕性(優性)遺伝疾患。中枢神経・網膜の血管芽腫、腎細胞癌、褐色細胞腫が三大病変として重要である。
脳動静脈奇形(AVM)は、脳の動脈と静脈が正常な毛細血管網を介さずに、ナイダス(nidus)と呼ばれる異常な血管の塊を介して直接つながっている先天性の血管奇形である。若年者の脳出血や、てんかん発作の重要な原因となる。