心タンポナーデは、心膜腔内に液体(血液や滲出液)が急速に貯留し、心臓が圧迫されることで拡張不全に陥り、致死的な心原性ショックを来す緊急疾患である。CBTや医師国家試験では、原因疾患(急性大動脈解離など)、Beckの三徴、奇脈、心エコー所見、そして緊急の心囊穿刺が毎年必ず問われる超頻出疾患である。
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呼吸困難、息切れ
胸痛
ショック症状(冷汗、顔面蒼白、頻脈、意識障害)
頸静脈の著明な怒張
奇脈(吸気時に脈が弱くなる、または触れなくなる)
初期評価
胸痛やショックを呈する患者において、Beckの三徴(血圧低下・頸静脈怒張・心音微弱)や奇脈を確認した場合に直ちに本疾患を疑う。
検査
心エコーが確定診断かつ最も迅速な検査である。大量(または急激)な心囊液貯留と、特徴的な「右室前壁の拡張期虚脱(diastolic collapse)」や右房の虚脱を確認する。胸部X線では心拡大(フラスコ状心:ただし急性期は拡大しないことも多い)を認める。心電図で低電位や電気的交互脈(QRS波の高さが1拍ごとに変化する)を認める。
鑑別
緊張性気胸(頸静脈怒張とショックを伴うが、呼吸音の減弱がある)、肺血栓塞栓症、急性心筋梗塞(単独)と鑑別する。
初期対応
静脈還流を維持するため、直ちに「急速輸液(細胞外液)」を行う(※利尿薬や血管拡張薬は静脈還流をさらに減らすため原則禁忌)。
根本治療
血行動態が破綻している場合、救命のために直ちに「心囊穿刺(エコーガイド下)」を行い、貯留液をドレナージする。ただし、急性大動脈解離や心室破裂などの器質的破綻が原因の場合は、穿刺だけでは根本的な止血ができないため、心臓血管外科による緊急開胸手術(修復術・ドレナージ)が絶対適応となる。
病態
伸展性の乏しい心膜腔内に液体が急激に貯留することで心膜腔内圧が上昇し、右室・左室の拡張が強く障害される。静脈還流が減少して一回心拍出量が激減し、閉塞性ショック(心外閉塞性・拘束性ショック)に陥る。
原因
急性大動脈解離(Stanford A型)の破裂、急性心筋梗塞後の心室自由壁破裂、胸部外傷、悪性腫瘍(癌性心膜炎)、尿毒症、特発性心外膜炎などが原因となる。
試験での重要ポイント
「Beckの三徴(①血圧低下、②頸静脈怒張、③心音微弱)」は絶対暗記必須。吸気時に収縮期血圧が10mmHg以上低下する「奇脈(Pulsus paradoxus)」も重要所見である。心電図では低電位差や電気的交互脈(Electrical alternans)を認める。心エコーは確定診断に必須であり、「心囊液の貯留」と「右室・右房の拡張期虚脱(collapse)」を確認する。治療の第一選択は「心囊穿刺(心囊ドレナージ)」であるが、原因が大動脈解離や心破裂の場合は直ちに緊急開胸手術が必要である。
覚え方・コツ
「タンポはBeck(ベック)で奇脈。Beckの3徴は、下(血圧低下)、上(頸静脈怒張)、中(心音微弱)。エコーで水たまりと右室ペシャンコ(拡張期虚脱)。急いで針を刺せ(心囊穿刺)!」と覚える。
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Dressler(ドレスラー)症候群は、急性心筋梗塞の発症から「数週間〜数ヶ月後」に、発熱や胸膜炎様胸痛を伴って発症する自己免疫性の「心膜炎(および胸膜炎)」である。
産褥心筋症は、それまで心疾患の既往がない女性が、妊娠末期から産後(産褥期)数ヶ月の間に突然発症する特発性の心不全。拡張型心筋症(DCM)と同様に左室の拡張と収縮能低下をきたす。母体の生命を脅かす重篤な疾患である。
拘束型心筋症は、心室壁が著しく硬くなり(コンプライアンス低下)、拡張不全(血液が心室に入りにくい)をきたす特発性心筋症。収縮能と壁厚は正常に近いが、著明な心房拡大と右心不全症状を特徴とする。予後は極めて不良である。
急性心筋炎は、主にウイルス感染などを契機として心筋に急性の炎症が生じる疾患。軽症例から、数時間〜数日で致死的な心不全やショックに至る「劇症型心筋炎」まで重症度は様々。若年者の突然の心原性ショックの原因として重要である。