HELLP症候群は、妊娠後期〜分娩期(または産褥期)に発症する、溶血(Hemolysis)、肝酵素上昇(Elevated Liver enzymes)、血小板減少(Low Platelets)を三徴とする重篤な産科的合併症である。急速に多臓器不全へ進行するため、原則として「急速遂娩(緊急帝王切開などによる分娩の終了)」が唯一の根本治療となる。
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突然の心窩部痛、右季肋部痛(肝腫大・肝皮膜の伸展による)
悪心、嘔吐
全身倦怠感
出血傾向(血小板減少、DICによる)
※妊娠高血圧症候群(高血圧、タンパク尿)を伴うことが多いが、必須ではない。
初期評価
妊娠後半の心窩部痛・右季肋部痛から直ちに疑う(胃痛と軽視しない)。
検査
血液検査で三徴を確認する。
①Hemolysis(溶血):LDH上昇、間接ビリルビン上昇、ハプトグロビン低下、末梢血塗抹での破砕赤血球。
②Elevated Liver enzymes(肝酵素上昇):AST、ALTの上昇。
③Low Platelets(血小板減少):血小板10万/μL以下など。
腹部エコーで肝臓の腫大や皮膜下血腫・腹水(肝破裂のサイン)を評価する。
治療方針
超緊急疾患である。唯一の根本治療は『妊娠の終了(急速遂娩)』である。母体の状態(DIC、肝破裂の有無など)と胎児の週数・状態を評価し、早急に分娩(緊急帝王切開、または条件が揃えば経膣分娩)を実施する。
分娩までの間、重症高血圧に対しては降圧薬静注、子癇(けいれん)予防に硫酸マグネシウム静注、DICに対しては新鮮凍結血漿(FFP)や血小板輸血などの強力な全身管理(集中治療)を行う。
病態
妊娠高血圧症候群(PIH)を背景とすることが多いが、血圧正常でも発症しうる。血管内皮障害により微小血栓が多発し、赤血球が破壊され(微小血管障害性溶血性貧血:MAHA)、肝臓の虚血・壊死(肝皮膜下血腫・破裂のリスク)、および消費性の血小板減少(DIC)をきたす。
試験・臨床での重要ポイント
「妊娠後期(30週以降など)」の妊婦が、「突然の心窩部痛(または右季肋部痛、胃の痛み)」や「悪心・嘔吐」を訴えるのが超定番のエピソード。単なる胃腸炎と誤診してはならない。血液検査で『溶血(LDH著増、間接ビリルビン上昇)』、『肝機能障害(AST/ALT上昇)』、『血小板減少』の3つ(HELLPの頭文字)が揃えば診断確定となる。治療のタイミングが母児の命を左右し、陣痛誘発や『緊急帝王切開による速やかな分娩(ターミネーション)』が最大の正解となる。
覚え方・コツ
「HELLP(ヘルプ)症候群は妊婦の緊急SOS!『H(Hemolysis:溶血)』『EL(Elevated Liver enzymes:肝臓パンク)』『LP(Low Platelets:血小板カラッカラ)』!妊娠後半に突然『みぞおち・右あばら』が痛くなったらコレを疑え!クスリで粘るな、赤ちゃんを出して(分娩)お母さんを救え!」
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胎児発育不全(FGR)は、超音波による胎児推定体重が基準値(-1.5 SD以下)を下回り、胎児が正常に発育していない状態。原因により、頭も体も小さい「均衡型」と、体だけが痩せ細る「不均衡型」に大別され、管理方針が異なる。
常位胎盤早期剥離は、正常な位置に付着している胎盤が、胎児の娩出「前」に子宮壁から剥がれ落ちる致死的疾患。母体は大量出血とDIC(播種性血管内凝固症候群)に陥り、胎児は酸素供給が絶たれて急速に仮死・胎児死亡に至る。
異所性妊娠は、受精卵が子宮腔以外の場所(約90%以上が卵管膨大部)に着床する異常妊娠。破裂すると腹腔内への大出血を引き起こし、出血性ショックで母体の命に関わる産婦人科領域の最重要救急疾患である。
羊水は主に「胎児の尿」で作られ、「胎児が嚥下(飲み込む)して消化管から吸収する」ことで一定の量が保たれている。このサイクルの破綻により、羊水インデックス(AFI)が24cm以上を「羊水過多」、5cm以下を「羊水過少」と定義する。