Trousseau症候群は、悪性腫瘍(特にムチン産生腺癌)に伴う血液凝固能亢進により、全身の静脈・動脈に血栓症をきたす腫瘍随伴症候群である。原因不明の多発性脳梗塞や深部静脈血栓症(DVT)で発症し、ヘパリン持続点滴が治療の主体となる。
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脳梗塞症状(片麻痺、失語、意識障害などが、異なる血管領域に多発・再発する)
深部静脈血栓症(下肢の腫脹・疼痛)、肺塞栓症(呼吸困難)
遊走性静脈血栓性静脈炎(体表の静脈炎が場所を変えながら出現する)
基礎疾患である悪性腫瘍の症状(体重減少、腹痛など)
初期評価
心房細動など明らかな塞栓源がないのに脳梗塞を多発・反復する患者、またはDダイマーが異常高値を示す脳梗塞患者で疑う。
検査
頭部MRI(DWI:拡散強調画像)で、両側の複数血管領域に散在する多発高信号スポット(塞栓性機序)を確認する。血液検査でDダイマーの著増。心エコーで非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)の疣贅を確認。最も重要なのは、全身の造影CTや内視鏡・腫瘍マーカー測定による『隠れた悪性腫瘍の検索』である。
治療方針
急性期および慢性期の血栓再発予防として『ヘパリンの持続点滴静注または低分子ヘパリンの皮下注』が第一選択となる。※通常の脳梗塞で用いる抗血小板薬や、ワルファリン・DOACなどの経口抗凝固薬は無効または再発率が高いため推奨されない。
根本治療は、原因となっている悪性腫瘍の治療(外科的切除や化学療法)である。腫瘍がコントロールされれば凝固異常も改善する。
病態
がん細胞(主に胃癌、膵癌、卵巣癌などの粘液・ムチン産生腺癌)から組織因子(TF)やムチンが血液中に放出され、血液の凝固カスケードが強力に活性化される。これにより、心室壁の異常がないのに心臓の弁に血栓が付着したり(非細菌性血栓性心内膜炎:NBTE)、そこから血栓が飛んで脳梗塞を多発させたり、下肢などに静脈血栓(DVT、遊走性静脈炎)を作る。
試験での重要ポイント
「原因不明の多発性脳梗塞(複数の血管領域にまたがる梗塞)」で発症した患者の背景に、『胃癌や卵巣癌』が隠れているエピソードが超定番。血液検査で『Dダイマー・FDPの著明な上昇』を認める。心筋梗塞や心房細動由来の脳梗塞ではない点が重要。抗凝固療法において、『DOACやワルファリンは効果が乏しく、ヘパリン(持続静注または皮下注)が有効』であることが絶対暗記キーワードである。
覚え方・コツ
「Trousseau(トルーソー)は、お腹のガン(胃ガン・膵ガン)が血をドロドロに固まらせる病気!ガンが出すネバネバ成分(ムチン)のせいで、脳梗塞やエコノミークラス症候群を繰り返す。飲み薬の血液サラサラ薬(ワルファリン)は効かないから、ヘパリンの点滴を続けろ!」
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CIDPは、自己免疫学的機序により、末梢神経のミエリン鞘(髄鞘)が慢性的に破壊(脱髄)される疾患。ギラン・バレー症候群(GBS)と類似の病態だが、2ヶ月以上かけて進行、または再発と寛解を繰り返す点で異なる。ステロイドが第一選択となる。
神経線維腫症1型(von Recklinghausen病:レックリングハウゼン病)は、第17染色体にあるがん抑制遺伝子(NF1遺伝子)の変異によって生じる常染色体顕性(優性)遺伝疾患。カフェ・オ・レ斑と多発する神経線維腫を特徴とし、全身の多彩な合併症を伴う。
三叉神経痛は、顔面の感覚を司る三叉神経(第V脳神経)が、脳幹からの出口付近で血管(主に上小脳動脈)に圧迫されることで、顔面に突発的で激しい「電撃痛」を繰り返す疾患。抗てんかん薬であるカルバマゼピンが特効薬となる。
ビタミンB1(チアミン)の欠乏により、糖代謝が障害されてATPが産生できなくなり、末梢神経障害や心不全、中枢神経障害をきたす疾患。心不全を伴う「湿性脚気」、末梢神経障害主体の「乾性脚気」、そしてアルコール依存症等に合併する中枢神経障害「Wernicke(ウェルニッケ)脳症」が有名。