口腔・消化管・女性生殖器に常在する嫌気性分岐状グラム陽性桿菌で、粘膜損傷後に組織境界を越えて進展する慢性化膿性肉芽腫性病変と瘻孔を形成する。
Actinomyces israelii
細菌
細長く分岐するフィラメント状のグラム陽性桿菌である。放線菌という名称から真菌と誤解されやすいが、細菌であり抗酸性は示さない。Ziehl-Neelsen染色では陰性となり、弱抗酸性を示すNocardia属との鑑別点として重要である。
Actinomyces属に属する嫌気性放線菌であり、真菌ではなくグラム陽性細菌である。通常はヒト常在菌として存在し、粘膜障害を契機に内因性感染を引き起こす。
偏性嫌気性〜微好気性・非運動性・非芽胞形成性の分岐状桿菌である。組織や膿瘍内では菌塊が石灰化・蛋白沈着を伴って黄色顆粒状となり、『硫黄顆粒(sulfur granules)』を形成することが特徴である。
ヒトの口腔内、歯垢、歯周ポケット、扁桃、消化管、女性生殖器などに常在する。健常者にも広く存在するため、単純な検出のみでは感染症とは診断できない。
外部から感染するのではなく、抜歯、歯周病、顎顔面外傷、誤嚥、消化管穿孔、腹部手術、長期間の子宮内避妊具(IUD)留置などにより粘膜バリアが破綻し、常在菌が深部組織へ侵入することで内因性感染を起こす。ヒトからヒトへの感染は認められない。
強力な外毒素は産生しないが、組織への接着能、菌塊(硫黄顆粒)形成、バイオフィルム形成、多菌種との共生による嫌気環境の維持などによって慢性化膿性炎症を引き起こす。線維化が高度で、病変は解剖学的境界を越えて連続的に進展することが特徴である。
頸顔面放線菌症が最も多く、『板状硬結(woody induration)』を伴う下顎部腫脹、膿瘍、瘻孔形成が典型的である。胸部放線菌症では肺炎や肺膿瘍、腹部放線菌症では腹腔内膿瘍や腸管周囲病変、骨盤放線菌症ではIUD関連感染を起こす。その他、肝膿瘍、骨髄炎、中枢神経感染なども認められる。病変は腫瘍のように浸潤し、解剖学的境界を越えて広がることが特徴である。
膿瘍、深部組織、生検組織、硫黄顆粒を採取し、抗菌薬投与前に長期間の嫌気培養を行う。表面スワブでは常在菌混入が多く診断価値は低い。病理組織では硫黄顆粒、Splendore-Hoeppli現象(周囲の好酸性棍棒状構造)、分岐状グラム陽性菌を確認する。培養には数週間を要することがある。
第一選択は高用量ペニシリンGであり、改善後はアモキシシリンへ切り替えて長期間(通常6〜12か月)の治療を行う。限局病変では外科的切除や十分なデブリードマンを併用することで治療期間を短縮できる。膿瘍ドレナージ、瘻孔処置、感染源となる歯科病変や異物(IUDなど)の除去も重要である。
口腔衛生を良好に保ち、歯周病や齲歯を早期に治療することが重要である。誤嚥予防、消化管疾患の適切な管理、長期IUD使用者では定期的な婦人科フォローを行う。細胞診でActinomycesが検出されても無症候例では一律に治療する必要はない。
Actinomyces israeliiは『嫌気性』『非抗酸性』『分岐状グラム陽性桿菌』『硫黄顆粒』『板状硬結』『瘻孔形成』が最重要キーワードである。病変が解剖学的境界を越えて浸潤すること、頸顔面放線菌症が最も多いこと、治療は高用量ペニシリン系を長期間投与することは国家試験・CBT頻出事項である。Nocardia属との鑑別も重要であり、Actinomycesは嫌気性・非抗酸性・常在菌による内因性感染であるのに対し、Nocardiaは好気性・弱抗酸性・土壌由来の日和見感染菌であることを整理して覚える。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。