動脈血液ガス分析は、pH、PaCO₂、PaO₂などから換気、酸素化、酸塩基平衡を調べる検査です。SpO₂だけでは分からない二酸化炭素貯留や混合性障害を評価できます。採血時の酸素投与条件と検体の扱いを確認してから解釈します。
最終更新日: 2026年10月27日
動脈血液ガス分析は、pH、PaCO₂、PaO₂などから換気、酸素化、酸塩基平衡を調べる検査です。SpO₂だけでは分からない二酸化炭素貯留や混合性障害を評価できます。採血時の酸素投与条件と検体の扱いを確認してから解釈します。
血液検査
PaO₂は動脈血に溶けている酸素の分圧、PaCO₂は二酸化炭素の分圧です。PaCO₂は肺胞換気の状態を考える手がかりになります。pHとHCO₃⁻を併せることで、呼吸性・代謝性の酸塩基障害や代償の関係を調べます。酸素化、換気、酸塩基は関連しますが、同じ指標ではありません。
測定する場面は、呼吸不全が疑われるとき、意識変化でCO₂貯留を考えるとき、重い代謝性アシドーシスなどを評価するときです。通常の静脈採血とは異なり、動脈から採取します。静脈血のpHなどが参考になる場面はありますが、静脈血の酸素分圧をPaO₂の代わりにはできません。
成人の代表的な目安はpH7.35〜7.45、PaCO₂35〜45mmHg、HCO₃⁻22〜26mEq/Lです。PaO₂は室内気、年齢、標高などの影響を受け、成人ではおおむね75〜100mmHgが参考にされます。施設・測定条件による違いを確認します。
酸素投与中のPaO₂を室内気の基準値だけで評価しません。同じPaO₂でも、室内気と高濃度酸素投与下では酸素化障害の程度が異なります。採血時刻、デバイス、酸素流量や設定FiO₂、呼吸状態を記録します。検査のために酸素を自己判断で外さないことが重要です。
まずpHが酸性側かアルカリ側かを見て、PaCO₂とHCO₃⁻の変化のうち、その方向を説明するものを探します。PaCO₂上昇は酸性側、HCO₃⁻上昇はアルカリ側に働きます。次に、もう一方の変化が代償で説明できるか、それとも別の障害が重なっているかを確認します。pHが基準範囲内でも混合性障害はあり得ます。
学習例:pH7.25、PaCO₂60mmHgなら呼吸性アシドーシスが疑われます。HCO₃⁻はpHとPaCO₂から算出される値で、その評価と以前の血液ガスとの比較により、急性・慢性や混合性障害を考えます。数値の組み合わせだけで障害が始まった時期を確定することはできません。SpO₂が酸素投与で保たれていてもCO₂貯留は否定できません。
酸素化はPaO₂だけでなく投与酸素濃度と合わせて評価します。気泡の混入や分析までの遅延は結果に影響するため、臨床像とかけ離れた値では採血・搬送条件を確認します。検体が本当に動脈血かという点も重要です。HCO₃⁻が血液ガスでは計算値として報告される場合があることも知っておきます。
血液ガスを読む順序は、①採血条件、②pH、③PaCO₂とHCO₃⁻、④代償・混合性障害、⑤酸素化です。pHを見ただけでアシドーシスの原因を決めたり、PaO₂を見ただけで換気が十分と判断したりしません。
例えば、呼吸数が多い患者でPaCO₂が低い場合は、過換気そのものが主な病態なのか、代謝性アシドーシスに対する代償なのかをHCO₃⁻から考えます。呼吸が速いという見た目だけで過換気症候群と決めるのは危険です。酸塩基障害は患者の病歴、循環、腎機能、電解質などに戻って原因を調べる必要があります。
動脈穿刺後は圧迫止血と穿刺部の観察が必要です。抗凝固薬の使用など出血に関わる情報も確認します。検査値の読み方だけでなく、患者への侵襲と検体の正確さを一緒に扱います。
酸素化と換気を分ける練習では、PaO₂が低くPaCO₂も低い例と、PaO₂が低くPaCO₂が高い例を比べます。前者では換気血流比不均等などに反応して換気が増えている可能性、後者では肺胞換気不足などを考えます。ただし、この組み合わせだけで原因疾患まで確定できません。
採血時の酸素条件を記録し忘れると、後から酸素化の重さや改善を比較できません。酸素投与や人工呼吸器の条件を変更した直後などでは、その時間関係も重要です。結果と患者の様子が合わない場合、まず患者を再評価し、測定結果を正しいものと決めつけたまま治療を進めないことが大切です。
参考資料 米国国立医学図書館MedlinePlus「Arterial Blood Gas (ABG) Test」(2025) 日本呼吸器学会「よくわかるパルスオキシメータ」(2021)
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