心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身の臓器に十分な血液を送り出せなくなる状態(低灌流)や、心臓の手前に血液がうっ滞する状態(うっ血)を引き起こす臨床症候群である。あらゆる心疾患の終末像であり、急性増悪と寛解を繰り返しながら徐々に予後が悪化する。
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左心不全症状(肺うっ血):労作時息切れ、起坐呼吸、夜間発作性呼吸困難、ピンク色泡沫状喀痰、頻呼吸。
右心不全症状(体静脈うっ血):下腿浮腫(圧痕を残す)、頸静脈怒張、肝腫大、腹水、食欲不振。
低灌流症状:四肢冷感、チアノーゼ、意識障害、乏尿。
血液検査:『BNP』または『NT-proBNP』の上昇(心室への負荷を反映する極めて重要なマーカー)。
胸部X線:心拡大(CTR>50%)、肺静脈うっ血(上肺野の血管陰影増強)、Kerley B線、蝶形陰影、胸水貯留(右側に多い)。
心エコー:LVEFの評価、壁運動異常、弁膜症の有無、下大静脈(IVC)の拡張と呼吸性変動の消失(右心圧の上昇)。
身体所見:III音、IV音、肺野のcoarse crackles(水泡音)。
急性期治療(CS・Forrester分類に基づく):
呼吸管理:酸素投与、NPPV(非侵襲的陽圧換気)。
うっ血(湿潤)に対して:『ループ利尿薬(フロセミド)』静注、『血管拡張薬(硝酸薬、カルペリチドなど)』静注。
低灌流(ショック)に対して:『強心薬(ドブタミンなど)』静注、重症例ではIABPやVA-ECMOの導入。
慢性期治療(HFrEFの予後改善薬:Fantastic 4):
①『ARNI(サクビトリルバルサルタン)』または『ACE阻害薬/ARB』
②『β遮断薬(カルベジロール、ビソプロロールなど)』※急性期の非代償期には導入・増量しない。
③『MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬:スピロノラクトン、エプレレノン)』
④『SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン、エンパグリフロジン)』
非薬物療法:心臓リハビリテーション、心臓再同期療法(CRT)、植込み型除細動器(ICD)。
病態
左心不全は肺に血液がうっ滞して『肺うっ血(息苦しさ)』をきたし、右心不全は全身の静脈に血液がうっ滞して『体静脈うっ血(むくみ、肝腫大)』をきたす。近年は左室駆出率(LVEF)により、HFrEF(EF低下)、HFmrEF(EF軽度低下)、HFpEF(EFの保たれた心不全)に分類される。
試験・臨床での重要ポイント
急性期心不全の血行動態評価である『Forrester(フォレスター)分類』と、初期対応の『クリニカルシナリオ(CS)』が超頻出。
症状では、横になると肺に水が広がって苦しくなる『起坐呼吸(座ると楽になる)』が特徴的。聴診での『III音(S3ギャロップ:心室の拡大・壁の伸展を示す)』、胸部X線での『Kerley B線(間質性浮腫)』や『蝶形陰影(Butterfly appearance)』が画像問題の定番。
覚え方・コツ
「心不全は『左は肺(息苦しい)、右は体(むくむ)』!一番のキーワードは『起坐呼吸』と『BNP(心臓のSOSホルモン)』。急性期の水浸し状態(うっ血)には、まずは『NPPV(マスクの人工呼吸器)』で肺を広げ、『利尿薬(フロセミド)』と『血管拡張薬』で水を抜く。慢性期(HFrEF)の寿命を延ばす最強の4つ(Fantastic 4)は『ARNI(またはACE/ARB)・β遮断薬・MRA・SGLT2阻害薬』だから絶対暗記!」
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Dressler(ドレスラー)症候群は、急性心筋梗塞の発症から「数週間〜数ヶ月後」に、発熱や胸膜炎様胸痛を伴って発症する自己免疫性の「心膜炎(および胸膜炎)」である。
産褥心筋症は、それまで心疾患の既往がない女性が、妊娠末期から産後(産褥期)数ヶ月の間に突然発症する特発性の心不全。拡張型心筋症(DCM)と同様に左室の拡張と収縮能低下をきたす。母体の生命を脅かす重篤な疾患である。
拘束型心筋症は、心室壁が著しく硬くなり(コンプライアンス低下)、拡張不全(血液が心室に入りにくい)をきたす特発性心筋症。収縮能と壁厚は正常に近いが、著明な心房拡大と右心不全症状を特徴とする。予後は極めて不良である。
急性心筋炎は、主にウイルス感染などを契機として心筋に急性の炎症が生じる疾患。軽症例から、数時間〜数日で致死的な心不全やショックに至る「劇症型心筋炎」まで重症度は様々。若年者の突然の心原性ショックの原因として重要である。