肝性脳症は、重症肝障害や門脈大循環シャントにより、本来肝臓で代謝・解毒されるべき有害物質(アンモニア等)が脳に達し、精神・意識障害を引き起こす病態である。West Haven基準による重症度分類と、手のひらがパタパタと震える「羽ばたき振戦」が特徴的である。
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精神症状:多幸感、抑うつ、性格変化、見当識障害。
意識障害:傾眠、昏迷、昏睡(West Haven基準のグレードI〜IV)。
身体症状:羽ばたき振戦(flapping tremor)、口臭(肝臭:甘酸っぱい臭い)、筋緊張亢進、錐体外路症状。
血液検査:『血中アンモニア(NH3)値の上昇』、BCAA/AAA比(フィッシャー比)の低下、肝機能異常。
生理検査:『脳波(三相波)』、神経心理学的テスト(数字繋ぎテスト:TMTなど)。
画像診断:腹部CT等で門脈大循環シャント(脾腎シャントなど)の有無を確認する。
急性期対応:原因・誘因(便秘、蛋白過剰など)の除去。
腸内環境の改善:『ラクツロース(合成二糖類)』の経口・注腸。腸内を酸性化してアンモニアの吸収を抑制し、緩下作用で排泄を促す。
抗菌薬:腸内細菌を抑えてアンモニア産生を減らす『リファキシミン』。
アミノ酸製剤:『BCAA(分岐鎖アミノ酸)』の投与(点滴・経口)。
外科的治療:巨大なシャントが原因の場合は、カテーテルによるシャント塞栓術(BRTOなど)を検討する。
病態
食物由来のタンパク質が腸内細菌によって分解されて生じた『アンモニア』が、肝機能低下やシャント(側副血行路)のために解毒されず、脳へ移行して神経細胞を抑制する。また、偽性神経伝達物質やアミノ酸バランス(BCAA低下、芳香族アミノ酸上昇:フィッシャー比の低下)も関与する。
試験・臨床での重要ポイント
『羽ばたき振戦(flapping tremor)』が絶対の身体所見キーワード。脳波では『三相波(triphasic waves)』が特徴。
誘因の聴取が臨床上極めて重要であり、①便秘(腸内でのアンモニア産生増)、②高タンパク食、③消化管出血(血液蛋白の分解)、④脱水・利尿薬、⑤感染症、などを確認する。治療にはアンモニアの産生と吸収を抑える『ラクツロース』が第一選択となる。
覚え方・コツ
「肝性脳症は『肝臓のフィルターを素通りした毒素(アンモニア)が脳を眠らせる』病気!手首を反らすとパタパタ震える『羽ばたき振戦』は絶対暗記。おしっこが出にくい(尿素回路ストップ)+ウンチが溜まる(便秘)とアンモニアが爆上がりする。治療は『ラクツロース』で下痢をさせて毒を出し、アミノ酸の質を整える『BCAA』を点滴しろ!」
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下部消化管出血は、トライツ靱帯より肛門側(主に大腸)からの出血である。大腸憩室出血、虚血性腸炎、大腸癌、痔核などが主な原因となり、胃酸の影響を受けないため鮮血や暗赤色便を呈する。
上部消化管出血は、トライツ靱帯(十二指腸空腸曲)より口側の消化管(食道、胃、十二指腸)からの出血である。胃・十二指腸潰瘍、胃癌、食道・胃静脈瘤、マロリー・ワイス症候群などが主な原因となる。
消化管穿孔は、胃や十二指腸、大腸などの消化管壁に全層性の穴が開き、胃酸、腸液、便などが無菌状態の腹腔内に漏れ出す超緊急疾患。急激な汎発性腹膜炎を引き起こし、敗血症性ショックに至るため、原則として緊急手術の適応となる。
虚血性腸炎は、大腸粘膜の微小血管の血流が一時的に低下し、腸管粘膜が虚血・炎症・潰瘍を起こす疾患。便秘傾向のある高齢女性に多く、「突然の左下腹部痛」に続く「下痢・鮮血便」が典型的な三徴である。多くは一過性で、保存的治療で自然軽快する。