環境や食品に広く存在する芽胞形成性グラム陽性桿菌で、嘔吐型・下痢型食中毒を起こす。多くは支持療法で軽快するが、眼内炎や菌血症などの侵襲性感染では培養と感受性に基づく治療が必要である。
Bacillus cereus
細菌
大型のグラム陽性桿菌であるが、陳旧培養ではグラム染色性が不均一となることがある。
Bacillus cereus groupに属し、毒素遺伝子をプラスミドまたは染色体上に保有する。近縁菌との確実な種レベル同定には分子学的方法が必要となる場合がある。
好気性または通性嫌気性、運動性をもつ芽胞形成桿菌で、血液寒天培地では一般にβ溶血を示す。Bacillus anthracisと異なり通常は運動性陽性である。
土壌、塵埃、水、植物、穀類、香辛料、食肉、乳製品などの環境および食品。芽胞が加熱後も食品中に残存することがある。
嘔吐型は米飯や麺類などであらかじめ産生された耐熱性毒素の摂取、下痢型は食品中の菌または芽胞を摂取し腸管内で毒素が産生されることで発症する。侵襲性感染は外傷、注射薬物使用、カテーテルなどに関連する。
嘔吐型では耐熱性環状ペプチド毒素セレウリドが嘔吐を誘発する。下痢型では非溶血性エンテロトキシン、ヘモリシンBL、サイトトキシンKなどが腸管上皮を障害する。ホスホリパーゼや溶血毒も組織侵襲に関与する。
嘔吐型食中毒、下痢型食中毒、外傷後眼内炎、角膜炎、菌血症、カテーテル関連血流感染症、心内膜炎、肺炎、脳膿瘍を起こす。
食中毒では臨床経過と共通食品摂取歴を重視し、必要に応じて便、食品、吐物から菌または毒素を検出する。侵襲性感染では血液、硝子体液、組織などを培養し、単なる環境汚染菌と判断せず臨床所見と複数検体陽性を評価する。
通常の食中毒は補液などの支持療法が中心で、抗菌薬は一般に不要である。侵襲性感染では多くのβラクタム系に自然耐性を示すため、バンコマイシンなどを経験的に検討し、感染部位と感受性結果に基づいて調整する。眼内炎では緊急の眼科的処置を要する。
調理後の米飯や麺類を室温に長時間放置せず、速やかに喫食するか低温保存する。大量調理では加熱後の急速冷却、再加熱、調理器具の洗浄を徹底する。芽胞は通常の加熱で生残しうるため、加熱後の増殖防止が重要である。
嘔吐型は調理済み米飯などに形成された耐熱性セレウリドにより短時間で発症し、黄色ブドウ球菌食中毒と同様に支持療法が中心となる。下痢型は腸管内で産生される易熱性毒素による。大型グラム陽性芽胞形成桿菌で、炭疽菌と異なり運動性とβ溶血を示す点が鑑別に有用である。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。