大腸菌はヒトや動物の腸管に常在するグラム陰性桿菌で、多くの株は無害だが、病原性遺伝子を獲得した株は下痢、尿路感染症、菌血症、腹腔内感染、新生児髄膜炎を起こす。感染部位と病原型を区別して診断する必要がある。([病気予防管理センター][13])
Escherichia coli
細菌
中等大のグラム陰性桿菌で、単在または短い連鎖として観察される。
Enterobacterales目Enterobacteriaceae科に属する。染色体、病原性アイランド、プラスミド、バクテリオファージなどに多様な病原因子や耐性遺伝子を保有し、腸管病原性株と腸管外病原性株に大別される。
通性嫌気性、非芽胞形成性、通常は周毛性鞭毛による運動性をもつ。オキシダーゼ陰性、カタラーゼ陽性で、乳糖を発酵し、MacConkey寒天培地で赤色から桃色のコロニーを形成する。インドール陽性株が多い。
ヒトおよび温血動物の大腸が主要リザーバーである。病原型によってはウシなどの動物、食品、水、医療環境が感染源となる。
腸管感染型は汚染された食品・水の摂取や糞口感染で伝播する。尿路感染、胆道感染、腹腔内感染などは患者自身の腸内細菌が尿道や損傷粘膜を介して侵入する内因性感染が多い。耐性菌は医療環境や接触を介して伝播することもある。
病原型により線毛、接着因子、莢膜、リポ多糖、溶血毒、シデロフォア、各種エンテロトキシン、志賀毒素、III型分泌装置、侵入因子などをもつ。K1莢膜は新生児髄膜炎、P線毛は腎盂腎炎、志賀毒素は出血性大腸炎とHUSに関連する。
急性胃腸炎、旅行者下痢症、出血性大腸炎、溶血性尿毒症症候群、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎、尿路性敗血症、胆管炎、胆嚢炎、虫垂炎・消化管穿孔後の腹腔内感染、肝膿瘍、菌血症、新生児敗血症・髄膜炎を起こす。
感染部位に応じて便、尿、血液、髄液、胆汁、腹水、組織を採取する。通常培養と菌種同定に加え、下痢症では毒素・病原遺伝子を検出する多項目核酸検査、STEC疑いでは志賀毒素検査を行う。尿培養では症状、膿尿、菌数、採取法を総合し、無症候性細菌尿や汚染と区別する。
感染部位、重症度、宿主背景、培養・感受性結果に基づいて治療する。ESBL産生菌、AmpC産生菌、カルバペネマーゼ産生菌があるため、地域アンチバイオグラムと既往培養を確認し、結果判明後は可能な限り狭域化する。下痢原性大腸菌では病原型により抗菌薬の適否が異なり、特にSTECでは安易な抗菌薬投与を避ける。
手洗い、食品の十分な加熱、生肉と調理済み食品の分離、安全な飲料水、調理器具の洗浄を徹底する。医療関連感染では標準予防策、尿道カテーテルの適正使用、抗菌薬適正使用を行う。([病気予防管理センター][14])
乳糖発酵、インドール陽性、オキシダーゼ陰性のグラム陰性桿菌が基本である。同じE. coliでも、ETECは毒素性水様便、EPECは乳児下痢、STECは血性下痢とHUS、UPECは尿路感染、K1株は新生児髄膜炎を起こす。菌種名だけで病態や治療を決めず、感染部位と病原性遺伝子を確認する。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。