水環境に存在する遅発育性非結核性抗酸菌で、上肺野空洞を伴う結核類似の慢性肺疾患を起こす。病原性が比較的高く、呼吸器検体から反復分離された場合は臨床的意義を慎重に評価する。
Mycobacterium kansasii
細菌
グラム陽性菌に分類されるが、細胞壁にミコール酸を豊富に含むためGram染色では染色性が低く、Ziehl-Neelsen染色や蛍光抗酸染色で抗酸性桿菌として観察される。非結核性抗酸菌(NTM)の一種であり、抗酸菌塗抹だけでは結核菌との鑑別はできない。
Mycobacterium属に属する遅発育性非結核性抗酸菌(NTM)であり、複数の遺伝子型・サブタイプが知られている。病原性には株間差が存在するが、臨床的には他のNTMより比較的病原性が高い菌種として位置付けられる。
非運動性・非芽胞形成性・偏性好気性の遅発育抗酸菌である。Runyon分類ではI群(光発色菌:Photochromogen)に属し、暗所では無色のコロニーを形成するが、光に曝露されると鮮やかな黄色色素を産生することが最大の特徴である。培養には通常2〜6週間を要する。
水道水、給水設備、シャワー、配管、病院の給水システムなど人工水環境に広く生息する。MACとは異なり土壌からの分離頻度は比較的低く、水環境が主要な自然宿主と考えられている。
汚染された水環境から発生するエアロゾルを吸入することで感染すると考えられている。通常はヒトからヒトへの感染は起こらず、患者隔離や接触者健診は不要である。
ミコール酸を主体とする脂質豊富な細胞壁、マクロファージ内生存能、ESX-1関連分泌系などにより宿主免疫を回避し、慢性的な肉芽腫性炎症を形成する。結核菌と共通する病原因子を有するため、画像や病理所見が肺結核と非常によく似る。
慢性肺Mycobacterium kansasii症が最も重要であり、慢性咳嗽、血痰、体重減少などを呈し、胸部画像では上肺野優位の浸潤影や空洞形成を認めるため肺結核との鑑別が必要となる。免疫不全患者では播種性感染、リンパ節炎、皮膚・軟部組織感染、骨・関節感染を生じることがある。
喀痰抗酸菌塗抹、培養、PCRやシークエンス解析などにより菌種を同定する。肺感染症は症状・胸部CT所見・反復培養陽性などATS/ERS/ESCMID/IDSA診断基準を満たして診断する。M. kansasiiは病原性が比較的高いため、一度の分離でも臨床的意義が大きいことが多い。治療開始前にはリファンピシン感受性を必ず確認する。
リファンピシン感受性例ではリファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)、クラリスロマイシンまたはアジスロマイシンを基本とした多剤併用療法を行い、通常12か月間治療する。リファンピシン耐性例、重症例、4か月以上培養陽性が持続する例では、モキシフロキサシンなどのフルオロキノロン系薬剤を含めた代替レジメンや外科治療を専門施設で検討する。単剤治療は耐性化を招くため行わない。
有効なワクチンや曝露後予防法は確立されていない。医療施設では給水設備や医療機器の適切な管理を行い、免疫不全患者では不要なエアロゾル曝露を避けることが望ましい。ヒトからヒトへの感染は通常認められないため、隔離や接触者健診は不要である。
Mycobacterium kansasiiは『光発色菌(RunyonI群)』『光を当てると黄色色素を産生』『非結核性抗酸菌(NTM)』『上肺野空洞形成』『リファンピシンがキードラッグ』が最重要キーワードである。画像所見は肺結核と非常によく似るが、ヒトからヒトへ感染しない点が結核との大きな違いである。MACより病原性が高く、反復分離の臨床的意義が高いこと、治療前にリファンピシン感受性を確認することは国家試験・CBTでも重要である。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。