皮膚と末梢神経の低温部位に親和性をもつ細胞内寄生性抗酸菌で、知覚低下を伴う皮疹と末梢神経障害を起こす。人工培地で培養できず、皮膚スメア、病理、PCRを組み合わせて診断する。
Mycobacterium leprae
細菌
グラム陽性菌に分類されるが、細胞壁にミコール酸を豊富に含むためGram染色には適さず、Fite-Faraco染色やZiehl-Neelsen染色などの抗酸染色で抗酸性桿菌として観察される。皮膚や末梢神経内のマクロファージ・Schwann細胞内に多数の菌体を認めることがある。
Mycobacterium属に属する偏性細胞内寄生菌であり、著しいゲノム退縮(genome reduction)を示す。多数の偽遺伝子を有し、代謝経路が大幅に失われているため、人工無細胞培地では現在も培養できない。研究にはアルマジロやマウス足蹠が利用される。
非運動性・非芽胞形成性の細長い抗酸菌であり、偏性細胞内寄生菌である。主にマクロファージと末梢神経のSchwann細胞へ感染し、増殖速度は極めて遅く、倍加時間は約12〜14日と細菌の中でも最も遅い部類に属する。体幹深部よりも耳介、鼻、四肢末端など温度の低い部位を好んで増殖する。
主な感染源は未治療の多菌型(らい腫型)ハンセン病患者である。一部の流行地域ではアルマジロやアカリスザルなどの野生動物が自然宿主となることも報告されているが、日本ではヒトが主な感染源である。
未治療の多菌型患者との長期間・濃厚な接触による呼吸器分泌物を介した感染が主要な感染経路と考えられている。感染力は比較的低く、多くの人は自然免疫によって発症しない。多剤併用療法(MDT)開始後は感染性が急速に低下するため、患者を長期間隔離する必要はない。
フェノール性糖脂質1(Phenolic Glycolipid-1:PGL-1)はSchwann細胞への高い親和性をもち、末梢神経障害の形成に重要な役割を果たす。また、細胞内生存機構によってマクロファージ内で長期間生存し、慢性感染を成立させる。神経障害は菌そのものだけでなく宿主免疫応答によっても増悪する。
ハンセン病(らい)の唯一の原因菌である。細胞性免疫が強い類結核型(TT)では境界明瞭な少数の皮疹、著明な知覚低下、末梢神経肥厚を認め、菌数は少ない。細胞性免疫が低下したらい腫型(LL)では左右対称性の多発皮疹、結節、びまん性皮膚浸潤、眉毛脱落(madarosis)、鼻粘膜病変、顔貌変化(獅子様顔貌)などを呈し、菌数は非常に多い。境界型では両者の中間像を示す。経過中には1型らい反応(Reversal reaction)や2型らい反応(ENL:結節性紅斑らい)が生じ、急速な神経障害を来すことがある。
知覚低下を伴う皮疹、末梢神経肥厚、運動障害、皮膚スメアでの抗酸菌検出、皮膚・末梢神経生検、PCRなどを総合して診断する。人工培地では培養できないため、培養陰性であってもハンセン病は否定できない。WHO分類では菌量に基づき少菌型(PB)と多菌型(MB)に分類し、治療方針を決定する。
WHOが推奨する多剤併用療法(MDT)が標準治療である。少菌型ではリファンピシンとジアフェニルスルホン(DDS)、多菌型ではリファンピシン、DDS、クロファジミンの3剤併用を基本とする。らい反応による神経炎には副腎皮質ステロイドを使用し、2型らい反応(ENL)ではサリドマイド(妊婦禁忌)やステロイドを用いる。早期治療により感染拡大と後遺症を大きく減らすことができる。
早期診断と多剤併用療法による感染源対策が最も重要である。家族や濃厚接触者には皮膚・神経症状の経過観察を行う。BCGには一定の予防効果が報告されているが、ハンセン病専用ワクチンではない。治療開始後の感染性は著しく低下するため、不必要な隔離は不要であり、患者に対する偏見や差別をなくすことも重要な公衆衛生上の課題である。
Mycobacterium lepraeは『人工培地で培養できない』『Schwann細胞へ感染』『末梢神経障害』『知覚低下』『抗酸菌』が最重要キーワードである。類結核型(TT)は細胞性免疫が強く菌数が少ないのに対し、らい腫型(LL)は細胞性免疫が弱く菌数が多いことを対比して理解する。診断では知覚低下を伴う皮疹と末梢神経肥厚が極めて重要であり、培養は利用できない。治療はリファンピシン・DDS・クロファジミンによる多剤併用療法(MDT)が基本であり、耐性防止のため単剤治療は行わない。国家試験・CBTでは『培養不能』『Schwann細胞』『PGL-1』『らい反応』『知覚低下』が頻出事項である。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。