腹痛を、内臓痛・体性痛・関連痛と時間経過から整理する。部位だけで病名を決めず、循環、腹膜刺激、妊娠可能性などを合わせて緊急性を評価する。
症状
内臓痛は管腔臓器の伸展、収縮、虚血などに関係し、部位がはっきりしない痛みや悪心・発汗を伴うことがある。壁側腹膜の刺激による体性痛は局在が明瞭になりやすい。関連痛は、別の場所の病態を共通する神経の入力などを介して感じる痛みである。
病態が進むと痛みの場所や性質が変わるため、今の部位だけでなく、最初の場所からの移動を聞く。腹腔内の病気に加えて、胸部や血管、代謝、泌尿器・婦人科の病態も候補となる。
突然か徐々か、始まった時刻、部位、移動・放散、持続か間欠か、食事・排便・排尿・月経・体位との関係を確認する。嘔吐、下痢、便秘、血便・黒色便、発熱、尿症状、性器出血なども聞く。
妊娠の可能性、手術歴、薬剤、基礎疾患、外傷を確認し、バイタルと全身状態を評価する。診察は観察、聴診、必要な触診等を状態に応じて行う。腹膜刺激徴候などの手技は、実習では指導者の監督と役割の範囲に沿って評価する。
高齢者、免疫抑制、妊娠などでは典型的な痛みや反応が乏しいことにも注意する。痛みの強さを、客観的な所見が乏しいという理由だけで軽視しない。
痛みと随伴所見 | 検討する方向 | 追加して確かめる点 |
|---|---|---|
右下腹部痛、移動する痛み | 虫垂など | 経過、腹膜所見、ほかの原因 |
右季肋部痛、発熱や黄疸 | 肝胆道系など | 循環、採血、画像 |
側腹部から鼠径部への痛み | 尿路など | 発熱、尿、閉塞の有無 |
強い痛みと乏しい腹部所見 | 血管・虚血なども検討 | 発症、循環、血管リスク |
下腹部痛と妊娠可能性・出血 | 婦人科を含む緊急病態 | 妊娠の確認、循環、画像 |
腹痛の部位と臓器名を対応させるだけでは、重症度や診断は確定しない。痛みが軽くなったことだけで、原因病態が解決したとも判断しない。
突然の激痛、持続する強い痛み、意識変化、失神、血圧低下、冷汗、吐血・下血、板状硬や強い腹膜刺激、持続する嘔吐・膨満、妊娠可能性を伴う腹痛と出血などは緊急に評価する。
原因の確定を待つ間も呼吸・循環を確認し、変化があれば再評価する。家庭で急な強い症状がある場合は救急要請につなぐ。飲食や薬剤、検査前の対応は病態と担当者の指示に基づく。
内臓痛・体性痛・関連痛の違いを、痛みの場所と時間変化へ結び付ける。局在が典型的でないことから急性腹症を除外しない。
報告には発症時刻、最初と現在の痛み、嘔吐・便・尿・出血、バイタルを含める。「腹痛あり、様子を見る」だけでなく、何が変わったら再度伝えるかもチーム内で確認する。
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