心窩部痛は、胸骨下端と臍の間の上腹部中央に感じる疼痛である。胃炎、消化性潰瘍、機能性ディスペプシア、急性膵炎、胆道疾患が多いが、急性冠症候群、大動脈疾患、下壁肺炎でも生じる。
症状
心窩部には胃、十二指腸、膵臓、肝左葉、胆道、大動脈などが位置し、内臓求心性神経の支配が重なるため、多様な臓器の病変が同じ領域へ疼痛として投射される。胃炎・消化性潰瘍では酸、ペプシン、粘膜炎症が知覚神経を刺激する。十二指腸潰瘍では空腹時・夜間、胃潰瘍では食後に症状が出る傾向があるが、個人差が大きい。急性膵炎では膵酵素による自己消化と後腹膜炎症により、背部へ放散する持続性激痛を生じる。胆石症や胆囊炎でも心窩部から右季肋部へ痛みを感じることがある。下壁心筋虚血は迷走神経反応と内臓痛により心窩部不快感、悪心として現れる。大動脈瘤・解離、腸間膜虚血でも上腹部痛を呈する。機能性ディスペプシアでは器質的病変がなくても内臓知覚過敏や胃十二指腸運動異常によって痛みが生じる。
発症時刻、突然か徐々か、持続性か間欠性か、食事・空腹・飲酒・体位との関係、背部・胸部への放散を確認する。悪心、嘔吐、吐血、黒色便、発熱、黄疸、胸部圧迫感、呼吸困難を聴取する。NSAIDs、抗血栓薬、飲酒、胆石、膵炎、冠動脈疾患の既往を確認する。診察では血圧、脈拍、体温、SpO2、眼瞼結膜、腹部膨満、圧痛、反跳痛、筋性防御、Murphy徴候、拍動性腫瘤を評価する。高齢者、糖尿病患者、冠危険因子がある場合は心電図と心筋トロポニンを検討する。血算、肝胆道系酵素、リパーゼ、腎機能、乳酸、便潜血などを選択し、超音波、内視鏡、造影CTを病態に応じて行う。Helicobacter pylori感染の評価も検討する。
消化性潰瘍は食事との関連、NSAIDs使用、黒色便が手がかりとなる。急性膵炎は背部放散痛、飲酒・胆石歴、リパーゼ上昇を伴う。胆囊炎は右季肋部痛、発熱、Murphy徴候、胆管炎は黄疸・悪寒を伴う。急性冠症候群は労作、冷汗、呼吸困難、冠危険因子を確認する。機能性ディスペプシアでは慢性反復性で、内視鏡などに症状を説明する病変を認めない。腹壁痛は局所圧痛が明確で、腹筋緊張時に疼痛が持続・増強する場合がある。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。