左右脈拍差は、左右同名動脈で脈拍の振幅、立ち上がり、到達時刻が異なる所見である。鎖骨下動脈狭窄、大動脈解離、大血管炎、塞栓・血栓などを示唆し、急性胸痛や肢虚血を伴う場合は緊急評価を要する。
身体徴候
左右同名動脈へ至る血管経路の一方に狭窄・閉塞があると、病変側の脈波振幅が低下し、立ち上がりや到達が遅れる。鎖骨下動脈狭窄では患側橈骨・上腕動脈の脈が弱く、上肢血圧も低くなる。大動脈解離では解離腔が腕頭動脈、総頸動脈、鎖骨下動脈、腸骨動脈などの分枝を閉塞し、急性の脈拍差を生じる。高安動脈炎や巨細胞性動脈炎などの大血管炎でも複数血管が狭窄する。塞栓・血栓では一肢の脈拍が急に減弱または消失する。胸郭出口部での動脈圧迫、外傷、手術後の血管変化も原因となる。心房細動などの全身性不整脈では左右の脈波の強さが拍ごとに変わるが、同時に触診すれば同じ拍動は原則として両側へ伝わる。
左右橈骨動脈を同時に触診し、振幅、到達時刻、規則性を比較する。差があれば上腕、頸、大腿、足部動脈へ範囲を広げ、どの血管分岐より遠位で差が生じるかを推定する。左右上肢血圧を適切なカフで反復測定し、鎖骨上窩・頸部・腹部の血管雑音を聴取する。皮膚温、色調、毛細血管再充満時間、神経症状、上肢運動時の疲労を確認する。急性胸背部痛では四肢脈拍、四肢血圧、神経所見を迅速に評価する。慢性差では血管超音波、上肢血圧波形、CT・MR血管撮影を検討する。胸郭出口症候群が疑われる場合は肢位による変化をみるが、誘発試験単独の特異度は高くないため画像・血流評価と統合する。
鎖骨下動脈狭窄では患側上肢の脈拍・血圧低下、鎖骨上窩雑音、上肢運動時症状を伴う。大動脈解離では急性疼痛と複数の分枝虚血所見がみられる。高安動脈炎は若年女性、脈なし、血管雑音、血圧差が特徴となる。解剖学的な動脈走行差、浮腫、検者の圧迫力でも見かけ上の差が生じるため、同時触診と反復評価を行う。不整脈による拍ごとの振幅変動を固定した左右差と誤認しない。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。