髄膜炎菌は鼻咽頭に保菌され、飛沫や唾液を介する濃厚接触で伝播する莢膜保有グラム陰性双球菌である。髄膜炎や電撃性菌血症を急速に起こすため、疑った時点で抗菌薬を開始し、濃厚接触者への予防投与を行う。([病気予防管理センター][3])
Neisseria meningitidis
細菌
グラム陰性の腎臓形双球菌で、髄液や血液の塗抹では好中球内外に認められる。
Neisseria属に属し、莢膜多糖の違いにより複数の血清群に分類される。侵襲性感染ではA、B、C、W、Y群などが重要で、線毛や外膜蛋白は相変異・抗原変異を起こす。
非運動性、非芽胞形成性、好気性の双球菌で、オキシダーゼ陽性、カタラーゼ陽性を示す。グルコースとマルトースを利用し、病原性株の多くは多糖体莢膜をもつ。
ヒトのみが自然宿主である。健康な人の鼻咽頭にも一過性に保菌され、思春期・若年成人、学生寮、軍隊、合宿など密接な共同生活環境で保菌と伝播が増える。
咳やくしゃみによる飛沫、キス、飲食物や口腔物品の共有など、唾液・呼吸器分泌物を介する長時間または濃厚な接触で伝播する。短時間すれ違っただけの接触では感染リスクは低い。
多糖体莢膜が補体による殺菌と貪食を回避する。IV型線毛は鼻咽頭上皮への付着に関与し、IgAプロテアーゼは粘膜防御を妨げる。リポオリゴ糖は強いエンドトキシン活性を示し、サイトカイン放出、血管内皮障害、DIC、ショックを引き起こす。
急性化膿性髄膜炎、髄膜炎菌性菌血症、電撃性紫斑病、敗血症性ショックを起こす。頭痛、発熱、項部硬直、意識障害に加え、急速に拡大する点状出血や紫斑が重要である。副腎出血によるWaterhouse-Friderichsen症候群、関節炎、肺炎、心膜炎を伴うこともある。
抗菌薬投与前に血液培養を採取し、禁忌がなければ髄液検査を行う。ただしショックや頭蓋内圧亢進が疑われる場合は腰椎穿刺や画像検査のために抗菌薬開始を遅らせない。髄液のGram染色、培養、核酸増幅検査を行い、分離株では血清群別と感受性検査を実施する。
侵襲性髄膜炎菌感染症を疑った時点で、セフトリアキソンまたはセフォタキシムなど髄液移行性の高い第三世代セフェム系を直ちに投与する。感受性が確認されればペニシリン系への変更を検討できる。ショック、DIC、脳浮腫、呼吸不全を集中治療し、抗菌薬開始後も呼吸器分泌物の除菌が確認できない薬剤を使用した場合は退院前の除菌投与を検討する。
患者には有効な抗菌薬開始後24時間まで飛沫予防策を行う。家庭内接触者、寮の同室者、口腔分泌物へ直接曝露した医療従事者などには、リファンピシン、セフトリアキソン、シプロフロキサシン、アジスロマイシンなどから地域の耐性状況と禁忌を考慮して速やかに予防投与する。高リスク者や流行地域への渡航者には血清群に対応したワクチンを検討する。国内の侵襲性髄膜炎菌感染症は5類全数把握で、診断後直ちに届け出る。([厚生労働省][4])
グラム陰性双球菌、オキシダーゼ陽性、グルコースとマルトースを分解する。補体終末成分C5〜C9欠損、エクリズマブなどの補体阻害薬使用、無脾症では侵襲性感染リスクが高い。発熱、項部硬直、非退色性紫斑、急速なショックは髄膜炎菌感染症を強く示唆する。濃厚接触者には発症の有無にかかわらず迅速な化学予防が必要である。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。