悪寒は寒さを強く感じる症状、戦慄は体温上昇に伴って起こる不随意な激しい筋収縮である。菌血症、重症感染症、急速な発熱時にみられ、単なる寒気より臨床的意義が大きい。
症状
悪寒・戦慄(chills and rigors)は、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-αなど)が視床下部の体温調節中枢でプロスタグランジンE2(PGE2)の産生を促進し、体温設定値(set point)を上昇させることで生じる。設定値が上昇すると現在の体温が相対的に低いと認識され、皮膚血管収縮による悪寒と、骨格筋の反復収縮(戦慄)による熱産生が誘導される。菌血症や敗血症ではサイトカインが急激に放出されるため、激しい戦慄を伴うことが多い。発熱後は設定値が正常へ戻ることで発汗が起こり、体温が低下する。
悪寒のみか、全身が激しく震える戦慄(rigor)を伴うかを確認する。発熱との時間関係、突然発症かどうか、咳嗽、喀痰、排尿時痛、頻尿、側腹部痛、腹痛、右季肋部痛、創部痛、皮膚感染、カテーテル留置、手術歴、歯科治療歴など感染源となり得る情報を聴取する。バイタルサイン(体温、血圧、脈拍、呼吸数、SpO2)、意識状態、尿量を評価し、必要に応じて血液培養2セット以上、血算、CRP、プロカルシトニン、乳酸値、尿検査、胸部X線・CT、腹部画像などで感染源検索を行う。戦慄中も意識は通常保たれており、てんかんとの鑑別では眼球偏倚、意識消失、発作後混乱の有無を確認する。
寒冷環境への曝露では悪寒を認めても発熱や炎症反応は伴わない。悪寒戦慄では意識が保たれたまま全身の律動的筋収縮がみられるが、全身性てんかん発作では意識消失、眼球偏倚、発作後混乱を認める。輸血副反応や薬剤熱でも悪寒戦慄がみられるため、輸血や薬剤投与との時間的関係を確認する。甲状腺クリーゼや褐色細胞腫発作では発汗や頻脈を伴うが、通常は戦慄は目立たない。
悪寒戦慄に加えて低血圧、頻呼吸、意識障害、乏尿、末梢冷感、乳酸上昇などを伴う場合は菌血症や敗血症を強く疑い、直ちに敗血症バンドルに基づく初期対応を開始する。免疫不全患者、好中球減少患者、中心静脈カテーテル留置中、胆道感染、尿路感染、感染性心内膜炎が疑われる症例では重症感染症の可能性が高い。悪寒戦慄に胸痛、呼吸困難、ショックを伴う場合は肺炎、肺膿瘍、急性胆管炎、腎盂腎炎など重篤な感染症を念頭に置く。
悪寒戦慄は『菌血症・敗血症を示唆する重要な症状』として理解することが重要である。『発熱+悪寒戦慄+右上腹部痛+黄疸』では急性胆管炎(Charcot三徴)を、『発熱+悪寒戦慄+側腹部痛+排尿症状』では急性腎盂腎炎を考える。悪寒戦慄を伴う患者では血液培養を抗菌薬投与前に採取することが重要である。国家試験・CBTでは、悪寒戦慄は単なる発熱よりも菌血症の可能性が高いこと、敗血症初期対応(血液培養・早期抗菌薬・輸液)と関連付けて問われることが多い。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。